目次
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ー 暑いときに血圧が下がりやすい
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ー 普段は高血圧でも注意が必要
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ー 立ったときに起こる起立性低血圧
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ー シニア世代に多い食後の低血圧

ここ数年、猛暑のせいで低血圧になり、転倒して頭を切ったり、ケガをしたという患者さんが多くいらっしゃいます。これほど頻繁に起こることはかつてなく、危険を感じます

 そう話すのは、内科・循環器科専門医の布施淳先生だ。

暑いときに血圧が下がりやすい

 高血圧に比べ軽視されがちな低血圧だが、放置すればめまいや立ちくらみ、慢性疲労や吐き気、動悸や集中力の低下など生活に支障を来す症状が現れる。

 気温の上がるこれからの季節、血圧が下がりやすく注意が必要だという。

暑いときに血圧が下がるのは、血管の拡張と脱水が関係しています。人は暑いときに体温を下げようと汗をかきますが、そのためにまず血管が拡張し、汗腺が集まる皮膚に血流を多く流すことで、汗を産生させるのです。

 皮膚は人体最大の臓器ともいわれ、人間の体重の約16%を占める。つまり体重が50kgなら皮膚の重さは約8kg、それを広げると約1畳分の大きさになるんです。そこに毛細血管が張り巡らされているので、血管が広がれば、多くの血液が皮膚に流れます。その分身体を流れる血液量は減り、血圧が下がりやすくなるわけです」(布施先生、以下同)

 皮膚の血流は1分あたり最大3~5Lと非常に多い。これは1分間に心臓から出る血流すべてを皮膚に送り出せるほどの量だという。さらに、脱水も重要なポイントで、汗をかくと身体の水分量が減り、血圧が下がっていく。

人は通常1日で1.3~3.5Lの水分を失いますが、暑い日に運動すると1時間で2Lも汗をかくといわれ、それに見合う水分を補給しなければなりません。体重の1~2%の水分を失うと軽度の脱水、3%失うと中度の脱水になり、頭痛や嘔吐(おうと)、血圧が下がるなどの症状が出ます