計画して生まれたホワイトライオンへ愛情を注ぐ

サーバルキャット、ホワイトタイガー、マウンテンライオン……。多種多様の動物を育ててきた
サーバルキャット、ホワイトタイガー、マウンテンライオン……。多種多様の動物を育ててきた
【写真】「綺麗すぎる」アイドル時代のプリンセス天功

 恋の噂は多々あったが、彼女にとって心を許せるパートナーは、「動物たち」だという。自身で多種多様の動物を育てるだけでなく、AWF(アフリカ野生動物保護財団)の日本親善大使に就任するなど、その“動物愛”は筋金入りだ。

「ラーセン夫妻からは数えきれないくらい大切なことを教わりましたが、その一つが動物との関係です。動物は人間のことがわかるし、話すことができるって。たくさんの動物たちに救われてきました」

 現在は、世にも珍しい1歳半のホワイトライオン「KING」を日本で飼育し、その愛くるしい様子は彼女のインスタグラムなどで確認することができる。スケートボードに乗って楽しそうにはしゃぐKINGの姿は、彼女の言葉を裏づけるようだ。

サーバルキャット、ホワイトタイガー、マウンテンライオン……。多種多様の動物を育ててきた
サーバルキャット、ホワイトタイガー、マウンテンライオン……。多種多様の動物を育ててきた

「ただのペットではないということを知ってほしくて、『Magical Jungle』という曲を出すことにしました。私とyucatさん、KINGの3人で歌っているのですが、KINGの“ガオー”を録音するのが大変で。いつも“ニャオニャオ”って言うばかりで怒らないんです(笑)」

 実は、ホワイトライオンを育てるという夢は30年前から計画してきたことで、一つひとつ手順を踏むことで、正式に飼い主として認められた経緯があるという。取材に同席した、長年、彼女を見てきたマネージャーは、「天功は常に何十年という計画を持って動いている」と舌を巻く。それを横で聞いていた天功が、頷きながら打ち明ける。

「『自分のことは残しておきなさい』と言われたので、私は18歳のときにアメリカで卵子凍結を行っているんですね。その子たちが、もしかしたら二代目プリンセス天功になってくれるかもしれない。ただ、私自身、100年後の日本を見てみたい気持ちがあるんです。ですから、心臓が止まっても冷凍保存してもらうところに予約済み。

 世界のお金持ちはだいたい100年で契約しているみたいですが、私は1000年先まで。医学の進歩次第ですけど、1000年後もプリンセス天功は生きているかもしれない」

現在はホワイトライオンのKINGを飼育中。天功とKING、歌手のyucatさんとユニット「KinG00(キング)」を結成し、楽曲にはエスペラント語が使われている
現在はホワイトライオンのKINGを飼育中。天功とKING、歌手のyucatさんとユニット「KinG00(キング)」を結成し、楽曲にはエスペラント語が使われている

 人形浄瑠璃、歌舞伎の作者である近松門左衛門は、“芸術の真実は、虚構と事実の間の微妙な境界線に存在する”という「虚実皮膜論」を提唱した。天功を前にして、筆者はそんなことを思い出していた。

「私のショーは場所を選ばない」

 そう彼女は話す。依頼された規模感によって、変幻自在にイリュージョンを創り出す。例えば、大阪・関西万博と連動する形で行われている「大阪グルメEXPO2025」では、わずか300人ほどが入ると満員になる屋内テントで、彼女はイリュージョンを披露している。かと思えば、高級ホテルの大広間を舞台に、数人のVIPを相手にショーを行うことも珍しくないという。天功にとって大切なのは、客の数や舞台の大きさではなく、目の前の人を楽しませることができるか否かなのだ。

「よく話すのですが、私は『あれはよかった』とか『楽しかった』ということが一つもないんですね。次から次につくり上げていかなければいけない。楽しむのはお客様であって、私ではない」

 二代目を襲名して以降、天功はずっとそれを貫徹し続けてきた。私たちは過去、今、未来という時間軸で生きているが、天功にはその感覚が「ない」という。だからなのだろう。令和の今になって当時放送されていた『大脱出』を見返しても、まったく色あせない。その挑戦に誰もが釘付けになる。周囲の期待や環境が変わっても、プリンセス天功が中心にあり続ける。あまりにも人間としてのスケールが大きく、すべてのことが天功を中心に回る─天動説の世界で生きているとさえ思ってしまう。

ユニット「KinG00」のメンバー、yucatさんと
ユニット「KinG00」のメンバー、yucatさんと

 天功のライフワークの一つが、「世界各地に自らの財産を埋蔵金として埋めている」こと。まるで歴史上の人物ではないか。最近も日本国内6か所に埋めたと話したことが話題となった。

「バスツアーを組んで、皆さんと一緒に探すのもいいかも。ヒントはそのときに教えます」

 にこっと笑う姿にイリュージョンを見た。プリンセス天功という人間的魅力には、タネも仕掛けもないのである。

<取材・文/我妻弘崇>

あづま・ひろたか フリーライター。大学在学中に東京NSC5期生として芸人活動を開始。約2年間の芸人活動ののち大学を中退し、いくつかの編集プロダクションを経て独立。ジャンルを限定せず幅広い媒体で執筆中。著書に、『お金のミライは僕たちが決める』『週末バックパッカー』(共に星海社新書)がある。