もし最初に『膵臓かもしれない』と先生に言ってもらえなかったら、がんに気づかずに、今頃もう死んでいたかもしれない。友人が紹介してくれた病院で知ったハイフ治療も、制度が数年前に変わって受けられるようになったものです。

 私はそうやって、いろんな方から情報を得て、選択することができた。病気のことだからラッキーという言葉を使っちゃいけないのかもしれないけど、これは本当にラッキーしかなかったなと思っているんです」

慌てずパニックにならないこと

 診断から1年たち、当初宣告された余命は今年いっぱいだが、眞弓さんは「死ぬつもりは全然ありません」と言い、仕事も続けている。もしがんなど命に関わる病気になったとき、どうしたら強くいられるものだろう?

眞弓さんの激動の人生を振り返り、同じように病と闘う人や、人生に悩む人に前向きに生きるヒントを綴った著書『人生、あれかこれか』が発売中。1650円(税込み) 撮影/下村一喜
眞弓さんの激動の人生を振り返り、同じように病と闘う人や、人生に悩む人に前向きに生きるヒントを綴った著書『人生、あれかこれか』が発売中。1650円(税込み) 撮影/下村一喜
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とにかく落ち込まないこと、そして慌てず、パニックにならないことでしょうね。病気=死というネガティブな気持ちは払拭したほうがいいし、病気になってしまったことはどんなに考えたところで変わらない。

 だったら現実に向き合って、やっていくしかないですからね。それは病気だけじゃなくて、生きていく上でも大事なこと。例えば結婚して子どもを産んでね、ふとしたときに『こんなはずじゃなかった』なんて思うことって、誰にでもあるものですよ。

 私もそうでした。でもずっと下を向いていたら、そのまま人生終わっちゃいますよ。人はいつか死ぬものです。違うのは、それが早いか遅いかだけ。だから自分らしく生きることを大事にしてください

 しかしそんな眞弓さんでも、一度は死を覚悟して終活を考えたという。

あれもこれも捨てないといけないなとか、事務所や家のことをどうしようと考えたんですけど、いらない服をちょっと処分したくらいで、今はやっていません。そうやって終活を完全にやってしまうと、本当に自分が死に向かっていて、もう命が短いんだなと思ってしまうなと感じて、やめたんです

 どんなときでも前向きな眞弓さんに「落ち込んで下を向いてしまうとき、どうしたらいいでしょう?」と聞いてみると……。

「一回バンザイしてみたら? 丸くなった背中を伸ばして上を向いたら、ちょっと気持ちが変わるかもしれませんよ。下を向いて悲劇のヒロインになって、同情してもらってがんが治るならいいけど……それじゃ治らないんだし(笑)。

 それから、がん保険は入っておいたほうがいいですよ。日本人の死因の1位はがんですし、治療にはお金がかかります。そうそう、『昔、がん保険に加入した』という方はプランの見直しを。治療法はどんどん新しくなっていますから

取材・文/成田 全