「もし最初に『膵臓かもしれない』と先生に言ってもらえなかったら、がんに気づかずに、今頃もう死んでいたかもしれない。友人が紹介してくれた病院で知ったハイフ治療も、制度が数年前に変わって受けられるようになったものです。
私はそうやって、いろんな方から情報を得て、選択することができた。病気のことだからラッキーという言葉を使っちゃいけないのかもしれないけど、これは本当にラッキーしかなかったなと思っているんです」
慌てずパニックにならないこと
診断から1年たち、当初宣告された余命は今年いっぱいだが、眞弓さんは「死ぬつもりは全然ありません」と言い、仕事も続けている。もしがんなど命に関わる病気になったとき、どうしたら強くいられるものだろう?

「とにかく落ち込まないこと、そして慌てず、パニックにならないことでしょうね。病気=死というネガティブな気持ちは払拭したほうがいいし、病気になってしまったことはどんなに考えたところで変わらない。
だったら現実に向き合って、やっていくしかないですからね。それは病気だけじゃなくて、生きていく上でも大事なこと。例えば結婚して子どもを産んでね、ふとしたときに『こんなはずじゃなかった』なんて思うことって、誰にでもあるものですよ。
私もそうでした。でもずっと下を向いていたら、そのまま人生終わっちゃいますよ。人はいつか死ぬものです。違うのは、それが早いか遅いかだけ。だから自分らしく生きることを大事にしてください」
しかしそんな眞弓さんでも、一度は死を覚悟して終活を考えたという。
「あれもこれも捨てないといけないなとか、事務所や家のことをどうしようと考えたんですけど、いらない服をちょっと処分したくらいで、今はやっていません。そうやって終活を完全にやってしまうと、本当に自分が死に向かっていて、もう命が短いんだなと思ってしまうなと感じて、やめたんです」
どんなときでも前向きな眞弓さんに「落ち込んで下を向いてしまうとき、どうしたらいいでしょう?」と聞いてみると……。
「一回バンザイしてみたら? 丸くなった背中を伸ばして上を向いたら、ちょっと気持ちが変わるかもしれませんよ。下を向いて悲劇のヒロインになって、同情してもらってがんが治るならいいけど……それじゃ治らないんだし(笑)。
それから、がん保険は入っておいたほうがいいですよ。日本人の死因の1位はがんですし、治療にはお金がかかります。そうそう、『昔、がん保険に加入した』という方はプランの見直しを。治療法はどんどん新しくなっていますから」
取材・文/成田 全