「たしかに備蓄米が市場に流れたことで、これまでの新米価格の高騰を抑えることができました。しかし、今のペースで放出していけば、今年の夏ごろには備蓄米は枯渇するという見方もあります。今年は猛暑が予想されており、イネカメムシといった害虫の大量発生の可能性も大きく、昨年より米の生産量が減るという見方が根強いんです。

 格安の備蓄米が出回らなくなれば、ただでさえ少ない新米の価格は今まで以上に値上がりすると考えられ、状況によっては5キロで1万円になる可能性もゼロではありません」(藤松さん、以下同)

Q4 お米の値段はどうやって決まるの?

 そもそもお米の値段はどのようにして決まるのか。

国内に流通しているお米の価格は『JA』といった出荷団体の意向が大きい。出荷団体は、われわれのような農家に対してお米の買い取り価格を提示し入札するのですが、ここ10数年はだいたい玄米60キロで1万3000円前後。昨年から徐々に上がり始めて、最近だと60キロで2万5000円になりました

 農家からすれば、今までの買い取り価格が安すぎたという。

お米を作るためには肥料やガソリン、資材といったさまざまなコストがかかります。しかし昨今の円安で、輸入費はもちろん、人件費も上昇するばかり。それにもかかわらず、出荷団体の買い取り価格は10年近く横ばいでした。

 私の場合、お米を60キロ作るのに費用が1万2000円ほどかかっていましたから、JAに納めていたら赤字でした。そのため自らネットショップなどを作って直接販売に力を入れて収益化に努めているんです」

Q5 黒字化でも厳しい…農家の経済事情は?

 赤字の農家は思いのほか多いという。

出荷団体が安い金額を提示しても、横のつながりなどで拒否できない立場の農家も多い。それに儲からないという理由で先祖から受け継いだ田畑を放棄するというのも難しい。これまでの安いお米は、赤字でも続けていた農家の犠牲の上に成り立っていたことを知ってほしいですね

 藤松さんの周囲でも経済的な理由で農業をやめる“廃農”が増加している。

「今のような買い取り価格が続けば農家は黒字でしょうが、安いお米を求める消費者が多いのも事実。また、いつ下がるかわかりません。

 農業従事者の高齢化も深刻で、今後ますます農業に携わる人が減少すると思います。そうなると米の生産量も減っていき、より米不足になって国産米の価格が上昇していくのではないでしょうか

Q6 現状を変えるため具体的な解決策は?

 衰退しつつある農業を変えるべく、藤松さんは“令和の百姓一揆”と銘打ったデモに参加。都心をトラクターで行進するといったパフォーマンスなどで日本の食の保全を訴えている。