「農家と消費者、どちらかが負担を強いられるのではなく、それぞれがプラスにならなければ未来はありません。
例えば、EUでは農業で得た収入が基準を下回った場合、その差額を国が補てんする所得補償制度があります。農家が安心できる制度が整えば生産も安定し、消費者も質のいい農作物を安定した価格で買えると思います」
Q7 米不足を乗り切るため今すぐできることは?
お米を買う側ができることはあるのか。
「消費者は農家ともっと密接につながってほしいですね。私のようにJAなどの出荷団体を通さないで、オンラインショップで販売している農家はたくさんあります。卸業者を通さないぶん、中間マージンはかかりませんから作る側も利益率は高く、買う側も良質で安心できるお米や作物を格安で買うことができます。
中には田畑の草取りに参加してくれたら割引で買えるというサービスを行っている農家もあります。多くの人がもっと農業を身近に感じるようになれば、国内の農業問題の解決につながるのでは」
Q8 世間を騒がす米騒動農水省の見解は?
一連の価格高騰を農林水産省はどのように受け止めているのか。同省に問い合わせると、広報評価課の報道室から公式の回答が返ってきた。
「1年で主食である米の価格が2倍となる異常な状態で、そのような事態が発生していることについては、重大な問題だと考えています。
騒動の要因については“昨年の南海トラフ地震臨時情報発令による需要量の急激な拡大”のほか“令和5年('23年)産の米が高温障害で収穫量が少なかったのではないか”“流通段階において目詰まりが生じていて、消費者に米が円滑に供給できていないのではないか”といったさまざまなご意見があると承知しています」
6月5日には閣僚会議において、米価高騰の要因の検証を行うことが表明された。「その検証結果を待ちたいと思います。今後の課題については、その検証の中で明らかになってくるのではないかと考えています」(農水省の報道室担当者、以下同)
備蓄米が枯渇するといわれている件について聞いてみると、
「今後、どのように備蓄米を放出していくかは、現時点で決まっていないので、枯渇するかどうかは今の時点でお答えできません」
小泉大臣は米価を下げるためにあらゆる選択肢を排除しないと発言。特定の対策について現時点で検討しているわけではないという。補償制度など労働環境の改善を求める農家たちの訴えについては、
「今年3月30日に“令和の百姓一揆”と称する集会が行われたことは承知しており、農林水産省としても、わが国の農業を取り巻く環境は、人口減少や高齢化による農業者の急減など、極めて深刻な状況にあると認識しています。
一方、集会において主張された所得補償の具体的内容については承知しておりませんが、過去実施していた旧戸別所得補償制度については、農業の構造転換の歩みを止めてしまうものであるという過去の反省を踏まえ、現在、野党においてその復活を主張する声はあがっていないと承知しております。
集会でも主張された所得補償や、野党からも新たな形でご提案をいただいている直接支払制度など、今後の農業者への支援のあり方については、与野党の垣根を越えて議論し検討を進めてまいります」
最後に、農水省側から国民に対するメッセージを聞いてみると、小泉大臣が、
「私は農林水産省の最も重要な使命は、国民の皆様に食料を安定的に供給することだと考えています。このため、まずは米について、消費者に安定した価格で供給できるように、全力で取り組んでいきたいと思います」
と述べたことをあげて、
「その実現に向け、省一丸となって取り組んでまいります」
とのことだった。前代未聞の米価格の高騰に揺れる日本。騒動が収まるのは、いつ――。