私服姿にも注目が集まった美智子さま

 私生活でも、TPOに合わせたファッションを心がけておられた。

「1964年3月、美智子さまは当時4歳だった現在の天皇陛下と学習院幼稚園の遠足に参加されました。同級生の園児たち、その父母と同じバスに乗って、神奈川県の『こどもの国』へ。美智子さまは子どもや父母らと牧場やスケート場を見学されるなど、一日中歩き回られました。

 それを見越してか、ヘアバンドで髪をまとめ、ゆったりとしたブラウンのステンカラーコートを羽織って防寒。手には遠足にぴったりなバスケットを持たれた、かなりカジュアルなコーディネートでした。ほかの園児の父母たちとも溶け込めるよう、なるべく気楽な装いを選ばれたのではないでしょうか」

 美智子さまは、その装いが醸し出す空気感や印象も常に意識されていた。

「1968年6月、美智子さまは母校である聖心女子大学で行われた身障者英語弁論大会に出席されました。このとき、美智子さまは淡いグリーンのセットアップをお召しでした。スカートはプリーツのやや短い丈でかわいらしい印象。

 インナーはレース生地、お帽子はピンクと、公務では珍しい全体的に可憐でさわやかな装いでした。重いテーマを扱うスピーチ大会だったからこそ、雰囲気が暗くなりすぎないよう、明るいトーンのお洋服を選ばれたのだと拝察いたします」

 美智子さまのファッションと言えば、独特なデザインの帽子を想像する人も少なくないだろう。

「美智子さまは皇太子妃の時代から上皇后となられた今も、つばの小さい帽子をお召しになることが多いのです。それは、国民との距離感を意識してのことだといいます。つばの広い帽子は、顔が影となって表情が見えにくく、挨拶をする際、人に当たってしまうこともあります。美智子さまは、国民となるべく近い距離感での交流を大切にされていましたから、帽子のデザインにかなりこだわっておられたのです」

 女性皇族のファッションにはそれぞれのカラーがあるが、その先駆者となった美智子さまは皇室の“ベストドレッサー”と言えるだろう。