監督からの脅しに近い言葉
ルール違反を“言葉”で咎めるならば、それは先輩による正しい説教といえるかもしれない。しかし、その内容は今回発覚したいじめと同様に常軌を逸している。
《先輩のだれかが、スパイクをはいたまま、ぼくの太ももをふみつけた。スパイクには金属製のつめがついている。そのつめがぼくの太ももの肉をえぐり、血が出た》
金本は先輩らに対し、“殺す気か?”と感じたが、それに対抗すればさらにひどくやり返されてしまうことが目に見えていたために、耐え忍んでいたという。
今回のいじめの被害者側の投稿によると、広陵高校の監督から「高野連に報告したほうがいいんか?」「2年生の対外試合がなくなってもいいんか?」などと詰め寄られたという。
「要するに“おまえが事を大きくすると野球部に迷惑がかかる”と。部に対し絶対的な権力を持つ監督から部員に対してですから、“そんなことはさせない。したらわかってるのか?”というような脅しに近い発言ともいえます」(前出・スポーツ紙記者、以下同)
そして、広陵高校野球部の監督によるいじめは、前出の金本に対しても行われていた。
「金本さんは法政大学への進学を志望し、野球部のセレクションを受ける準備をしていましたが、監督から“嘘”の日程を教えられ、セレクションを受けられなかった。浪人を経て、今度は中央大学野球部のセレクションを受けようとしますが、推薦についてこれまた嘘をつかれ、入部できなかったことを後に語っています。
金本さんの広陵高校時代は現監督とは別の人でしたが、いじめについても監督の所業にしても、広陵の悪しき“伝統”は昭和の時代から今に至るまで続いているといえるのではないでしょうか」
日本高野連による『日本学生野球憲章』には、制定時より変わらぬ“前文”がある。
《いかなる艱難をも凌ぎうる強靭な身体を鍛練する事》
“艱難(かんなん)”──それが他者から受ける暴行や強要、恐喝、脅しなどであってはならない。