2024年3月、スキャンダル発覚前の水原一平(左)と大谷翔平/共同通信社
2024年3月、スキャンダル発覚前の水原一平(左)と大谷翔平/共同通信社
【写真】大谷翔平が訴えられた、真美子さんとも参加していたハワイ高級リゾート地の着工式

 大谷翔平にとってはあまり望ましくない映像化だろうが、不利益を被る場合は損害賠償を求めることができるのか。

水原一平をドラマ化する社会的意義

『樋口国際法律事務所』の国際弁護士である樋口一磨弁護士に聞いた。

「まずは、名誉毀損に当たるかです。事実と異なる描き方をされ、名誉が低下するようなことがあれば、訴えることになるでしょう。この場合の事実というのは、第三者目線での客観的事実というより、大谷選手目線での事実かどうかがポイントになりそうです。

 アメリカでは名誉毀損で争って負けた場合、膨大な金額の賠償を払わなければなりません。そこまでのリスクを冒して大谷選手と争うメリットはないように思えます」

 では“大谷翔平”という実名がドラマ内で使われるのも問題になるのだろうか。

「名前を使うとなるとパブリシティー権の問題が発生します。著名人の名前を勝手に使用して商売をすると違法になることがあります。大谷選手に訴えられたときのリスクは非常に大きいので、許可を取ってから制作するはずです。

 もし、勝手に名前を使うとなれば、ニュースといった報道やドキュメンタリーであれば実名を出すのは許容されるため、そういった方向に寄せて作らないといけません」(樋口弁護士)

 大谷を“敵”にするリスクがありながらもドラマ化の話が進んでいる背景について、映画ライターのよしひろまさみちさんはこう話す。

「ハリウッドに限らず、日本を含めて世界的にオリジナル脚本のネタ不足です。アメリカはケーブルテレビチャンネルが多くあるうえに、Netflixなども登場し、単純計算して年間で倍から3倍くらいの作品数を作らないといけなくなりました。ドキュメンタリーや実話ベースの作品はオリジナル作品より作りやすい。ただ、時間がたてば事件も風化するので、今回の件は急ピッチで話を進めていると思います。

 大谷選手は人気があるので、ハリウッドセレブが被害に遭った事件のドラマ化と思えば、こうした作品が作られるのも納得です」

2024年6月5日、水原一平被告は連邦地裁に出廷。罪を認める答弁をした 写真/共同通信社
2024年6月5日、水原一平被告は連邦地裁に出廷。罪を認める答弁をした 写真/共同通信社

 脚本次第では大谷の見え方がよくも悪くもなりそうだが、どんなストーリーになるのか。

「アドバイザーのアルバート・チェン氏はスポーツ賭博に関する書籍を書いています。欧米ではオンラインカジノによるギャンブル依存者の急増が社会問題になっている状況があるので、水原氏がなぜギャンブルに走ったのか、という部分を強調して描く可能性があります。水原氏もある意味で“被害者だった”という切り口でしたら、ドラマ化する社会的意義もありますし、いい作品になると思います」(よしひろさん)

 ドジャースはパドレスと地区優勝を争っている最中。大谷が、野球だけに集中できる環境であってほしい。