アメリカにいる孫に会いに行くことも大きな楽しみのひとつだ。
自分の頭で考えて選ぶ力が必要
「息子夫婦に長女がおり、やっぱり孫はかわいくて、忙しくてもアメリカに行く時間を頑張ってつくっています。お嫁さんは中国系アメリカ人で英語を話すので、孫とのコミュニケーションも英語。いずれは日本語や中国語でも話せるようになるといいですね。
孫は私のことを大好きでいてくれて、離れているときはビデオチャットで話すこともあるんです。すごく幸せな時間です」

教育者として40年近く大学で教壇に立ってきたアグネス。今も大阪経済大学の客員教授をしており、講演会に呼ばれることも多い。
「教えることは好きで、学生から学ぶことも多いですね。今は先生よりも歌手の仕事のほうが緊張します(笑)」
多忙な中でも新しいことにも積極的に取り組み、今はAIに夢中だ。
「連載のテーマを考えたり、書いた文章の日本語がおかしいところを指摘してもらったり。今後は翻訳にも活用するつもりです。『今70歳で身長と体重がこれくらいで筋肉をつけるにはどうしたらいい?』『アメリカに3日間行くんだけど予定を組んで』とか、日常のこともAIに尋ねますが、いい答えをくれるんです。
まだ法整備が整っておらず、慎重に使わないといけない部分はありますが、AIが広がっていく流れは止められません。使わないのではなく、どう使うかを自分の頭で考えて選ぶ力が必要だと思っています」
最近はライブ配信にも力を入れている。
「最初はどうすればいいのかわからず試行錯誤でしたが、やってみると配信を通して中国で本の読者がすごく増えました。年齢や環境を言い訳にせず、変化を怖がらずにやってみることがこれからの時代を生きる鍵になるのかもしれません」
マルチな才能を発揮してきたアグネスだが、まだまだ目標があるという。
「小説を書きたいんです。短編は書いたことがありますが、長編小説はまだ書いたことがなくて。歴史的背景も少し入れた恋愛小説になると思います。小説の構想を若い人に話したら『韓国ドラマみたい』と言われました(笑)。完成を楽しみにしていてください」
「ひなげしは枯れない」。アグネスはこれからもたくさんの花を咲かせていくに違いない。
取材・文/紀和 静
アグネス・チャン 歌手・エッセイスト・教育学博士。1955年香港生まれ。14歳で香港デビュー、17歳のときに『ひなげしの花』で日本デビューし、トップアイドルに。上智大学国際学部を経て、カナダのトロント大学(社会児童心理学)に留学。'94年に米国スタンフォード大学で教育学博士号(ph.D)を取得。日本ユニセフ協会大使など文化人としても活躍。著書は『スタンフォード大に三人の息子を合格させた50の教育法』(朝日新聞出版)ほか。