喫煙所空白地帯では「電車に乗って吸いに行ってください」

 もうひとつの問題が、1月の『大阪市路上喫煙禁止条例の改正』だ。これまで6地区だった路上喫煙禁止地区を大阪市内全域に拡大し、(対象は大阪市が管理する「道路・広場・公園その他公共の場所」等)路上喫煙を行った場合は1,000円の過料徴収の対象となる、というもの。

 路上喫煙の禁止自体は、飲食店にとっても歓迎すべきこと。しかし、問題はその受け皿となる喫煙所の整備があまりにも杜撰(ずさん)なことにある。

 当初、民間が管理する私道や私有地の灰皿撤去に関する努力義務規定が議論されていたが、これでは店内で吸えないお客さんに「喫煙は外でお願いします」と案内することさえできなくなってしまう。組合などの陳情によってこの文言は削除され、代わりに「喫煙所の整備は市の責務」という一文が加えられた。

「これで一安心かと思いきや、事態は思わぬ方向に進みました。有識者会議で大阪市が『市内に必要な喫煙所が140か所』という目標を発表したのです。東京都千代田区(大阪市の面積の約20分の1)でさえ約80か所の喫煙所があるのに、なぜ広大な大阪市で140か所で足りると思ったのか。全く根拠が分からない数でした」

横山英幸大阪市長・日本維新の会副代表

 そして、横山英幸市長は「目標の140か所の喫煙所が確実に確保できる見通しとなり、さらに万博までに300か所の確保を見込める」として、条例の施行に踏み切った。しかし、その内訳を知った中村氏は唖然としたという。

「300か所のうち、約4割以上がパチンコ店の喫煙室だったのです。大きなパチンコ店だと、一つの建物に2つも3つも喫煙室がある場合があり、それらは別々にカウントされています。これでは数の帳尻を合わせているだけで、全く意味がありません」

 現状その喫煙所数は約395か所に増えているが、うちパチンコ店の喫煙所は154か所で依然として大きな割合を占めている。

 また、そのように数合わせで用意された喫煙所には当然場所の偏りがあり、御堂筋や谷町筋など、大阪を代表するオフィス街であっても「喫煙所空白地帯」が生じてしまっている。

「実際にたばこを吸いたいと思った時、どう案内すればいいか分かりますか?『ここから駅まで歩いて、電車に乗って3つ目の駅で降りて、そこにあるパチンコ屋さんで吸ってきてください』。喫煙所が近くにないお店だと、そうなってしまいます。お客さんにこんな案内、できるわけないでしょう」

アンケートでわかった「ミナミは圧倒的にポイ捨てが多い」

 こうした行政の姿勢に疑問を感じた組合は、上部団体である全国飲食業生活衛生同業組合連合会と共に「大阪市内の喫煙所充足数及びたばこのポイ捨て状況に関する調査」を実施したという。

 この調査は、今年5月、大阪市在住または大阪市内に通勤している20〜69歳の男女800名にネットを通して行われたものだが、まとめると主にこちらのような実情がわかったという。