
「母親になって後悔してる」
そんな刺激的なワードで、自分の子育ての苦悩をSNSなどで発信する人が増えている。「後悔するほどに、何が母親たちを苦しめているのか」リアルな声を聞きたくて独自取材を行った。
短期集中連載 産んだこと、後悔してる
短期集中連載の2回目は、夫の海外赴任で自分のキャリアを中断し、専業主婦になったマミさん(37)の話をお伝えする。
「1人目の子どもを産んだとき、『人生終わった』と思った」
ブログ系サイトにそう書き記したマミさん。現在はベトナム在住のためオンラインでの取材になったが、慣れた様子で受け答えも非常に明快だ。
IT企業のプロダクトマネージャーをしていたマミさんは大学の同級生と結婚し、28歳で娘を出産した。周囲に子どもを産んだ友人は誰もいなかったが、大人になったら母親になるのは当たり前だと思っていたので、20代のうちに産みたいと考えていたのだ。
「自分は絶対いい母親になる」と自信満々で出産を迎えたが、産んだ直後から病室で泣く日々が始まったという。
「母乳育児を推奨している病院を選んだので、母乳が出なくても、出せみたいな感じで(笑)。でも、私は全然母乳が出なかったから子どもは夜も寝なくて……。初日から母子同室だったので、ずっと抱っこしながら泣いてました。
母親ならみんなこれに耐えているんだと思っていたので、できない自分が悪いんだと思ってしまって」
実家で1か月過ごして自宅に戻ると、母子2人きりのワンオペ生活が待っていた。夫が勤務する建設会社は典型的な男社会で、結婚したときに同僚から「奥さん仕事辞めないの?」と聞かれたほど。夫の帰宅はほぼ毎日夜11時過ぎだった。
ある日、娘を抱いてベランダに出て日光浴をしていると、こんな考えが浮かんだ。
「このまま赤ちゃんを落としたらどうなるんだろう」
マミさんは自分でもびっくりして、慌てて部屋に戻ったそうだ。
「悲しいとか感情は何もなくて、もう、フッと。そのときは育児が全然楽しめていなかったんだと思います。ただおっぱいをあげたり、オムツを替えたりしてお世話をすることに、喜びを見いだせなかったんでしょうね。
産んだときは、『かわいい、かわいい』と言ってはいたけど、かわいいって思い込もうとしていたのかな」