鶴太郎は当時のことをそう語る。そして鶴太郎の読みどおり、このあと山田はロケットスタートでブレイクしていくことになる。

 ドラマ『野々村病院物語』の撮影現場では、大御所俳優に囲まれて、さぞかし緊張したのではと思いきや、山田は物怖じすることなく周りに溶け込んだ。

美しかった“雅子お姉ちゃん”

 先輩たちから可愛がられ、山岡久乃さんともよく食事に行ったという。中でも年が近かった夏目雅子さんは親しくしてくれた。

21歳のころ。本格的な芸能界デビューはお笑い芸人ではなく俳優としてだった
21歳のころ。本格的な芸能界デビューはお笑い芸人ではなく俳優としてだった
【写真】初々しい…“俳優”としてデビュー当時した当時の邦子さん

当時、夏目さんはすでに売れっ子だったのに、電車で移動するのにビックリしました。そういう普通の感覚を大事にしていたんです。夏目さんの提案で宇津井健さんの自宅にアポなしで遊びに行って、食事をごちそうになったこともありました。

 宇津井さんはすごく喜んでくれましたが、後でプロデューサーからめちゃくちゃ怒られて。そしたら夏目さんが『邦子に行こうと誘われました』なんて言う(笑)。舌をペロッと出して笑うもんだから、私も怒れなくなって。すごくおちゃめで、姉のような存在でしたね」

 衣装に影響しない下着のつけ方やドーランの塗り方など、女優としての基本的なことも手取り足取り教えてもらった。夏目さんとの数ある思い出の中でも忘れられない出来事がある。

「生放送の番組で食事が出たので、口いっぱいに食べ物を詰め込んでいたところ、急なインタビューが始まったんです。飲み込むことも吐き出すこともできず困っていると、後ろから夏目さんが『ここに出しなさい』と両手をすくうように差し出してくれて。

 私は後ろを向いて、夏目雅子さんの手に食べ物をパッと出し、何事もなかったようにインタビューに答えました。人気女優なのに平気でそんなことができる方でした

 その後、夏目さんは作家の伊集院静さんと結婚するが、幸せのさなか、白血病に倒れる。享年27。

亡くなるとは思っていなかったのでびっくりして、あれは堪えました。結婚されたときの美しかった“雅子お姉ちゃん”の姿を今でも思い出します

 ドラマが終わると、今度はフジテレビ制作のお笑い番組『オレたちひょうきん族』からオファーがあった。

「休みの日に知り合いのスタッフに偶然会って、一緒にフジテレビに行くことになったんです。そこでもらっていなかった『笑ってる場合ですよ!』の尻切れトンボのままだった出演料を渡されて、そのままプロデューサーと近所のステーキ屋さんで食事をすることに。

 そこで『(これまで特番だった)オレたちひょうきん族がレギュラー番組になるから出ない?』と誘われて。お金をもらって肉を食べちゃったもんだから断れなかった(笑)