「問題児だった」学生時代
言われてみると、そのとおりだと思うことばかりだが、実践するとなるとなかなかむずかしい。
「つい相手の言葉を遮ってしまったり、話をじっくり聞くことができなかったり。そのたびにハッと気づいて反省しています(笑)」
大浦さんは父親をはじめ、父方の祖父、祖母、おば、大伯母、母方の祖母が俳優という芸能一家で育った。恵まれた環境に見えるが、順風満帆ではなかったようだ。
「学生時代の自分は、かなりいいかげんで、高校2年のときに自主退学。その後、このままではダメだと奮起して再試験を受け、復学しました。いわゆる問題児だったわけです。だから、目の前の環境や問題に適応できずに苦しんでいる子どもたちの気持ちが、多少なりとも理解できます」
自分の戻る場所があるなしの分岐点は、子ども時代の経験にあると大浦さんは言う。
「私はどちらかというと家族より、つらいときにそばにいてくれた周りの人から、たくさんの愛情を受けてきたのかもしれません。その中で自分の居場所を見つけることができたし、道からはずれるたびに、戻ることができました。それは“愛されている”という実感があったからです。
子どもに愛情を注ぐことができるのは親です。その愛情を安心して受け止め、心の土台にできるのが小学生までです。その先は反抗期もあり、素直に受け入れることが次第にむずかしくなってきます。私は児童たちの親にはなれませんが、近くにいる大人として児童たちに愛情を持って接することはできます。いずれ私のことなど忘れてしまうかもしれませんが、心のどこかに愛情を注いでくれた大人がいたと、記憶してくれればいいなと思っています」