教育とは「引き出し合うもの」
大人になると感情を押し殺し、めったに涙を流すこともなくなる。それに対して子どもたちは感情が豊かで、気持ちを素直に表現する。さまざまな場面で、子ども同士が衝突し、子どもが泣いているという光景もよくあるそうだ。
「以前の私なら、すぐにどちらが悪いかという対応をしましたが、先の3つのことを大切に子どもに接していく中で、何があったのか、お互いの気持ちや状況がよく見えるようになってきました。子どもは自分を理解してほしいと願うと同時に、大人が思っている以上に、相手を受け入れることができる、やわらかい心があります。すぐに仲直りできる子どもたちを見ると、大人は素直じゃないなあと痛感します。素直じゃないから人間関係もこじれたりします。
子どもは発想が豊かで、大人の思いつかないことを考えたりもします。子どもたちといると、忘れていたことに気づくことが多いですね。今日は仕事に行くのがつらいなと思う日でも、子どもたちの笑顔を見ると元気になります」

大浦さんに、あらためて教育とは何なのかを聞くと、「大切な“いのち”を引き出すこと」と話してくれた。
英語で「教育」はエデュケーション。ラテン語の「養い育てる(educare)」と「引き出す(educere)」の2つの同音語句が語源になっている。大浦さんは、いまのエデュケーションの意味になっている“養い育てる”より、“引き出す”という意味のほうがピンとくると話す。
「大人が子どもの個性や才能を引き出す一方で、大人も子どもから大切なものを引き出してもらっているような気がするのです。教育とは、一方的なものではなく、大人と子どもの両方で引き出し合うもの。それができたら、いい関係が築けるのではないでしょうか」
これは学校の世界だけでなく、俳優の世界でも通用することだという。
「俳優同士、お互いの才能を引き出し合えれば、自分自身も成長するし、作品も素晴らしいものになります」
大浦さんの俳優業と学校教育にかける情熱は燃え尽きることなく、二足のわらじ生活は今後も続けたいと考えているとのこと。どちらの仕事もさらなる飛躍を遂げそうだ。
取材・文/佐久間真弓