また、名誉館長を務める「プロレス殿堂館リングサイド」(熊本県天草市)にも、しばしば顔を出している。野球好きだった力道山の影響で、敬子さんも野球観戦が趣味だ。

孫は甲子園にも出てプロ入りを期待されていた

大谷翔平選手が大好きなんです。お子さんが生まれて、また素晴らしい才能が出てきそうですね

 と目を輝かせる。野球評論家の張本勲氏とも交流がある。力道山と張本氏は共に韓国にルーツを持っていたことから、仲が良かったという。

大谷選手のサインをもらってきてとお願いしたことも(笑)。断られましたけど

田中敬子さんが着ているコートは力道山から初めてプレゼントされたもの
田中敬子さんが着ているコートは力道山から初めてプレゼントされたもの
【写真】スーパースターだらけ! 力道山の交友関係が凄すぎる

 敬子さんの孫が野球をやっていたため、張本氏と一緒に孫の練習を見に行ったことも。

孫は甲子園にも出てプロ入りを期待されていたんです。張本さんにも太鼓判を押されましたが、本人はプロに進む気はなく、大学卒業後は野球をやめて就職しました

 張本氏といえば、かつて大谷翔平選手について「二刀流はよくない」と発言したことが話題に。そのとき「言っちゃダメなことなのかね」と敬子さんに意見を求めたことがあったという。

張本さんは『俺はね、嫌いで言ってるんじゃない。一つのことをやったほうが彼にはいいと思ったから言ったんだ』と。私は『張本さんは正直だからみんなに愛されているのよ』と伝えたんです

 敬子さんのまっすぐな言葉を聞きたい人は絶えない。今も講演会に引っぱりだこで、多忙な日々を送っている。亡き夫、力道山が「日本プロレス界の父」ならば、敬子さんは「プロレス界の母」といっても過言ではないだろう。

夫と夫を応援する人たちに守られて、波瀾万丈の日々を乗り越えることができました。時代とともに力道山を知らない人たちも増えてきましたが、これからも力道山の“闘魂”を語り伝えていくのが私の役目です

取材・文/紀和 静

たなか・けいこ 1941年、神奈川県生まれ。日本航空の客室乗務員を経て、プロレスラー・実業家の力道山と21歳で結婚。半年後、力道山が他界し、事業を引き継いだことにより30億円もの負債を背負う。20年かけて借金を返済し、力道山の遺志を伝えるため社会貢献活動・講演活動を行いながら、「闘魂SHOP」名誉店長、「プロレス殿堂館リングサイド」名誉館長を務める。著書に『夫・力道山の慟哭』(双葉社)ほか。