「おこめ券」に反対する区市町村

 国からの重点支援地方交付金は、5億円の見込みという。

全額を充てれば、全市民の水道基本料金の月額2000円を8か月間ゼロにできます。しかし、重点支援地方交付金には食料品の高騰対策に充てる特別加算枠があり、全額を注ぎ込めないので一部を市内の小・中学校の給食無償化に充てます。

 給食無償化はもともとやる予定だったため、その予算を水道料金に回して8か月間ゼロを実現します。このやり方はOKなんです」(前出・山本市長)

 国の顔色をうかがわなくていいのだろうか。

「農水大臣には屈しません。おこめ券を市民に配ることは100%ありません。区市町村は国からお金をもらうため、国に忖度するものです。私自身もこのあいだ別の要望で農水省に行きましたし、この後に行ったら何を言われるか不安もありますが、報道されて味方も増えました。

 水道料金の減免に経費はほとんどかからず、5億円規模でも100万円程度で済みます。市役所に寄せられる意見の約8割は賛同するものです。反対意見の中には、小学生から“おこめ券を見たことがないから欲しい”と、かわいいものもありました」(山本市長)

 福岡県古賀市もおこめ券配布は見送る方向だ。田辺一城市長は地元メディアの取材に対し、「地方自治体は国の下請けではありません。政府が全国一律におこめ券の配布を実施したいのならば、国の責任で国が主体となって実施されればいい」と突き放したという。

「何をするのがいちばん市民のためになるのか、考えて実行します。国が“これをしろ”と言ってきているとは認識しておりません。現状は各部署から要望を受けているところで、例えば事業部からは“プレミアム付き商品券を配ってはどうか”と提案がありました。市長は、市民の多様なニーズを踏まえて検討する意向と承知しております」(古賀市財政課の担当者)

 ほかに福岡県福岡市、静岡県静岡市、長野県長野市などがおこめ券配布を見送る構え。

 東京都江戸川区も独自路線を行く。

「住民税の非課税世帯に対して3万円を現金給付する予定です。サラリーマンなどの納税者は、国の所得税の基礎控除引き上げによる減税効果が今年の年末調整で2万〜4万円程度見込まれるなど恩恵があり、減税を実感できるはずです。年金生活者や低所得の非課税世帯はこうした恩恵を受けられず、物価高の影響を受けています。

 おこめ券配布はコストも時間もかかります。現金であれば使用期限もありませんし、高騰しているのは食料品全般です。経費も5%以内に抑えられ、スピーディーに配れます。市議会総務委員会の審議では、全会派に理解していただきました」(江戸川区財政課の和泉健課長)