暮らしの影響「不動産」

 不動産市場でも「価格の調整」が起き始めている。

「中国人富裕層の“爆買い”が止まれば、港区のマンションは暴落する」といった極端な言説も聞かれるが、実態はもう少し複雑だ。中国事情に詳しいジャーナリストの北上行夫氏はこう説明する。

「前提として“中国人”の中身を区別しないといけません。例えば都心にある高級マンション群の『晴海フラッグ』。購入した中国人の6割は“日本で長く生活し、納税している在日中国系の住民”といわれています。中国本土の富裕層が投資目的で買い進めたわけではないんです」

 最近では、中国籍を離れ、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、イギリスなど、別の国のパスポートを取得する富裕層も多い。そのため彼らは日中関係が悪化してもこれまでどおり日本の不動産を購入できる。価格が下がるのは中国籍の不動産所有者に対する中国での「海外資産への本格課税」が始まったときなのだ。

 中国当局が、「中国で稼いだ金で購入した海外不動産なら国の利益。課税強化は当然」と厳しく打ち出した場合、中国籍の投資家らが一斉に売却に動くだろう。中古マンションだったら3分の2、タワーマンションでは半値近くに下がるとみられる。とはいえ、それでも日本人が購入しやすくなるとは限らない。

「これまで中国人向けに高値がつけられていました。適正価格に戻れば、今度は欧米の投資家や、海外パスポートを取得した中国出身の富裕層が買い支えます。日本人にとっての“買いやすい価格”は、国際的にも“お買い得物件”なんです」(北上氏)

暮らしの影響「海産物・食品」

 2023年以来、中国は2年ぶりに日本産水産物の輸入を停止した。しかし、アメリカや東南アジア向けに販路開拓が進んだことから、「今回の影響は限定的」との声もある。ホタテやサケなどは、中国の需要が価格を押し上げていた側面もあり、今後はその上乗せが外れて適正価格に近づくとみられる。

「国内向け海産物は価格が安定するでしょう。食品では、『中国産商品が棚から消えたこと』に気づく程度です。飲食店の食材輸入ルートは多角化しており、メニューの値上げも抑えられています。食品価格は比較的安定しています」(前出・経済部デスク)