杉本氏による「許されざる被害」

 杉本氏と同じく、信じがたいような性的メッセージが明らかになったにも関わらず、県民の票を集めた黒岩氏。政治ジャーナリストの大谷昭宏氏は、彼が再選に至った理由をこう語る。

「黒岩知事の場合は、あくまで特定の女性との個人的なやりとりであって、犯罪的要素はない。不倫関係にあった女性はある意味において被害者ですが、妻帯者である黒岩氏と交際していたわけですから、女性の側にも不貞行為に加担したという落ち度がある。杉本氏によるセクハラの被害者には何の落ち度もありませんから、根本の部分が違っています。

 杉本氏はセクハラだけじゃなく、不同意わいせつ罪の可能性も問われています。痴漢行為によって、被害女性を身体的に傷つけている可能性もあるわけです。さらに、複数の被害者に対して20数年にわたって1000通以上のセクハラメッセージを送っているという、異常な状態。県政において許されざる被害が出ています。一方、黒岩氏の不倫問題は、県政への直接的な被害があったわけでもないので、県民にとって許容の範囲だと受け取られたのでしょう」

 また、黒岩氏が神奈川県知事だったことも理由の1つだという。

「地方都市である福井県と首都圏にある神奈川県では、県民の認識も大きく異なります。人口が80万人に満たない福井県民にとって、誰が知事であるかは非常に大きな問題です。生活圏も県内にとどまる人が多く、知事がどのような行政を進めるかというのは、県民の生活に直結していますから。対して、900万人を超える人口を誇る神奈川県では、知事1人によって行政が大きく左右されるということはあまりない。職場や学校生活を、すべて神奈川県の中で完結させられている方は少ないでしょう。よって、県民にとって知事という存在がそれほど大きくなく、選挙で投票する人たちも“こんな人が知事だと、たまったもんじゃない”という認識はあまりないのです」(大谷氏、以下同)

 セクハラが明らかになった杉本氏は現時点で今後の展望を明らかにしていないが、“出直し出馬”の可能性は極めて低いようだ。

「1000通にわたるメールの内容が明らかになって、これだけの騒動になりましたから、まず出馬すること自体が不可能でしょう。出たところで、女性の票なんて1票も入らない。いずれにせよ、風通しの悪い現状を変えられるかどうかにおいて、前知事の出番はありません」

 黒岩氏が不倫報道によって県民の信頼を損ねたのは、言うまでもないだろう。しかし、一方的なセクハラ行為で女性職員らを傷つけた杉本氏の罪は、遥かに重い。