しかし、一念発起して歌手の仕事につながる芸能事務所へ移籍。人気作曲家の遠藤実氏に見いだされ、初面談の際のやりとりがきっかけで誕生したのが、デビュー曲の『こまっちゃうナ』だった。

忙しいのが本当にありがたかった

 質問された際にリンダさんが発した「困っちゃうな」というひと言に、遠藤氏がインスパイアされたというこの曲。元祖ミックスルーツモデルというべき愛くるしい少女がキュートに歌う『こまっちゃうナ』はいきなりのミリオンヒットに。

 もともと忙しかったリンダさんはさらに歌番組を掛け持ち、全米での公演も果たす。地方のステージ、レコード屋さんのキャンペーン、サイン会……さらに当時の人気番組『てなもんや三度笠』のレギュラー出演も決まり、多忙を極めた。

もう、ほんとに寝る暇もなくて。テレビの仕事が終わって、夜中の12時から雑誌の撮影が始まるなんて当たり前。母が心配して『うちの子が死んだらどうするんですか!』と社長さんに訴えるほどでした。

 でもありがたいことにね、私、どこでも眠れちゃうんです。新幹線でも夜行列車でも、走り出すといいリズムになってすぐ寝ちゃうの。むしろそんなに忙しいのが本当にありがたくて……

 ご本人は現在もお元気なため笑い話となっているが、令和の今では考えられないほど、スターの労働環境は不適切だったのだ。

『こまっちゃうナ』のヒット以降、多数の作品を世に送り出すも、だんだんヒットは出なくなっていく。芸能界の風は残酷で、それまでの熱狂が少しずつ冷めていった。

いくら寝ないで歌番組やキャンペーンに出てもヒットにつながるわけじゃないと、身に沁みて感じました。歌番組も以前は真ん中だった立ち位置が、少しずつ端っこになって……。最後には出演そのものがなくなっていく。みんなこうやって苦労してきたんだなってそのとき実感しました