遺族に襲いかかる「二重の苦しみ」
鳥集さんは新型コロナワクチン問題を追及する医療ジャーナリストとして、その名を知られている。コロナワクチン接種後の健康被害を訴え、週刊誌で記事を連載し、著作を多数発表。講演やシンポジウムにも登壇し、警鐘を鳴らした。
そうした活動を通じて、志を同じくする多くの仲間ができ、知り合った同志の1人にある女性がいた。
「彼女は私の恩人ともいうべき存在で、精神的な支えにもなってくれました。残念ながら2年余りで縁は切れてしまったものの、今でも心から感謝しています」
しかし、鳥集さんはこの女性から思いもよらない言葉を浴びせられている。
「彼女のストレスがたまり、感情が抑えきれなくなったりすると、亡き妻を強い口調で罵ることがあったのです。
『子どもを残して死ぬなんて、無責任じゃない?』『育てる自信がないなら、どうして子どもをつくったの?』『親や子どもを悲しませるようなことは、私なら絶対しない』……などと。なぜ、会ったこともない妻のことを、そこまでひどく言えるのか。非常に驚いたと同時に、ショックを受けました」
亡くなった妻を非難されることで再び苦しみに襲われる─。このように遺族が二重の苦しみを味わうのは稀有な話ではない。昨年12月に著書『妻を罵るな』を刊行した後、鳥集さんのもとにはメールや手紙、SNSを通じて多くの反響が寄せられた。そこに自死遺族の同様の例が見られたのだ。
「例えば、ご主人が自死されたケースでは、独り身になった奥様が義母から『あなたが何か言ったんじゃないの!』などと罵られたそうです。親族の言葉なだけにつらかったでしょう。私の場合、妻の両親から非難されたことは一切ありませんでした。むしろ、私や孫たちのことを常に気遣ってくれました」
自死は肯定できるものではない。ただ一方で、その選択をした人のことを理解してほしいと訴える鳥集さん。
「自死を無責任や身勝手と決めつけるのは、心の病に対する偏見です。妻自身も決して死にたかったわけではありません。生きることを望み、本気で病気を克服しようと努力していました。家事も仕事もこなし、息子たちを育て上げるのが心からの望みだったんです。
その思いは妻が残したノートに記されています。苦しみ抜いた末の決断であって、身勝手、無責任などではないのです。これは、自死した多くの人に共通することだと思います」
あわせて、自死遺族に対する理解も必要だという。
「遺族はすでに自分のことを責めています。私がそうだったように、後悔の念に苛まれているのです。よほどのことがない限り、その傷口に塩を塗り込むような形で『おまえのせいだ』などと責めるのは絶対にやめてほしい」
自死防止の活動は盛んに行われている。命を救うための取り組みは不可欠といえる。加えて、鳥集さんが望むのは社会全体のあり方だ。
「自死した人の多くが本当は生きたかったんです。またその遺族も、家族の命を守れなかった自分を責めている。自死をめぐる社会の理解が深まることを心から願います」
鳥集徹さん●1966年、兵庫県生まれ。同志社大学卒。会社員、出版社勤務などを経て、2004年から医療問題を中心にジャーナリストとして活動。最近では、新型コロナワクチンや高齢者医療の問題点について論じる。著書『新薬の罠』(文藝春秋)で第4回日本医学ジャーナリスト協会賞大賞を受賞。著書多数。
取材・文/百瀬康司

















