どん底で決意した修行への道

 それでも生き続けられたのは、自分に与えられた“使命”を感じたからだという。

「中傷には“僧侶は人を殺さない。天台宗の僧籍を持っているとは認めない”というメッセージもあって、初めて怒りが湧いたんです。僧侶として命を絶つわけにはいかない。じゃあ生きて認めてもらおうじゃないかと。そんなとき、小学生の男の子がネットでいじめに遭い、自死したというニュースを見たんです。これは、大人が守っていかなくてはと思いました。当時の私は、生きながら死んだも同然。ならば新たな加害者を止めようと、比叡山延暦寺で修行に入り、本物の僧侶になろうと決めました。祖父の遺品の教本で見つけた、伝教大師最澄の言葉、一隅を照らす人になりたいと思ったことも理由です」

 事件から2年後、52歳で入った修行の道は過酷そのもの。14kgも痩せたという。

「千日回峰行などで知られる山岳修行は、つらく厳しいものばかり。捻挫した足をかばっていたら、逆足の骨にヒビが入ってしまったり、足の爪が剥がれてしまったりしましたが、生きて帰って誹謗中傷した人々と対峙してやる、という思いが私を奮い立たせました」

 2020年には新しい寺を建立。行きすぎた批判の怖さを訴える講演会や、手描き友禅で仏教の世界を伝える展覧会を行うほか、保護犬・保護猫活動、元女性受刑者への洋服支援なども行う。

「私に対して根拠のない批判をした方々ともお会いし、最後にはあなたのおかげで僧侶になれたとお礼を言えました。でも攻撃的な言動は人生を破壊し、命を奪うもの。言葉の重みを改めて考える社会であってほしいです」

高橋美清さん…1964年生まれ。日本テレビ『おはよう天気』や競輪番組で活躍した元フリーアナウンサー。2014年には歌手デビューを果たした。僧侶としては2011年に得度、2017年に比叡山延暦寺で修行を行い、2020年に天台宗照諦山心月院尋清寺を建立し住職に就任。
高橋美清さん…1964年生まれ。日本テレビ『おはよう天気』や競輪番組で活躍した元フリーアナウンサー。2014年には歌手デビューを果たした。僧侶としては2011年に得度、2017年に比叡山延暦寺で修行を行い、2020年に天台宗照諦山心月院尋清寺を建立し住職に就任。
【写真】競輪番組を長く担当、フリーアナウンサー時代の高橋さん
高橋美清さん…1964年生まれ。日本テレビ『おはよう天気』や競輪番組で活躍した元フリーアナウンサー。2014年には歌手デビューを果たした。僧侶としては2011年に得度、2017年に比叡山延暦寺で修行を行い、2020年に天台宗照諦山 心月院 尋清寺を建立し住職に就任。

取材・文/植田沙羅