体外受精では、妊娠の可能性を高めるために卵巣刺激のホルモン剤を自分で注射しなければならない。桑子さんはそのタイミングが東京出張と重なったこともあった。
医師からは「順調にいけば双子となる」
「薬剤は冷蔵保管が必須。保冷バッグに詰めて新幹線に乗り、到着するとホテルに直行して部屋の冷蔵庫に保管しました。薬の副作用で身体がむくみ、スーツのファスナーが閉まらなくて焦りましたが(笑)、なんとか決まった時間に注射をしながら仕事を終えました」
採卵日を迎え、10個の卵子を採取することができた。体外受精を経て、3個の受精卵が無事に育った。
日本産科婦人科学会の規定では、多胎妊娠のリスク回避のため、体外受精で子宮に戻す受精卵は原則として1個と定められている。しかし女性が35歳以上である場合や、体外受精を2回以上行っても妊娠しなかった場合は2個まで戻すことが認められている。
「医師からは、私の年齢的に、受精卵を2つ戻してもどちらもダメになる可能性も。順調にいけば双子となると言われました。夫婦でよく話し合い、2つ戻すことに決めました」
うれしいことに、初めての体外受精で待望の陽性反応を得た。
「夫と一緒に検診に行くと、先生が『三つ子です!』と驚いていらして。うれしさ、安堵、驚きといろんな感情がまざり、夫と涙ぐみながら笑ってしまいました」
着床後に受精卵が自然に分裂すると双子になるが、体外受精ではその確率がやや高まる。約3年の不妊治療を経て、初めて妊娠することができた桑子さん夫婦の喜びはひとしおだったが、高齢初産のうえに多胎と、母体へのリスクは高く油断はできない状態だった。
「早産や妊娠高血圧症候群などさまざまなリスクがあることも理解し、食事や睡眠に気をつけて規則正しい生活を心がけました」
出産年齢が高まるなか、体外受精で生まれる子どもは年々増加している。日本で初めて体外受精が成功したのは1983年のことで、その後、急速に普及した。
だが、当時は受精卵の培養技術が未熟で妊娠率が非常に低かったため、少しでも可能性を上げるべく、受精卵を複数個移植するケースが相次いだ。結果的に、'80~'90年代には三つ子、四つ子など多胎妊娠が急増。

















