母子の命を守るため、やむを得ず子宮内の赤ちゃんを減らす「減胎手術」も行われるようになった。最近では治療技術の進歩から多胎妊娠は減少し、桑子さんのような例は珍しい。非常に重く難しい問題だが、桑子さんはその選択についてどのように考えたのだろう。

経済的不安もそれ以上に毎日が幸せ

医師からは、減胎手術についてのお話はなかったと思います。ただ、3人とも流産してしまう可能性もあること、かつて三つ子を妊娠した方も出産時には双子になってしまったことの説明を受けました。それを聞いて、とにかく行けるところまで子どもたちと頑張る! と決意したんです

ミルクはセルフ飲みで育児に工夫をしている 写真/桑子英里さん
ミルクはセルフ飲みで育児に工夫をしている 写真/桑子英里さん
【写真】素敵なママ姿!三つ子を抱えて幸せそうな桑子さん

 医師のすすめでNICU(新生児集中治療室)のある総合病院に転院。妊娠中は出血を繰り返すなど不安な思いもしたが、大きなトラブルもなく、ほぼ予定どおりの32週で無事に出産した。

退院後は生活が一変しました。私も夫も実家が遠方ですので、基本的に育児は夫婦2人。想像の3倍、いや3乗、大変です(笑)。でも、最近は子どもの1人が泣くと、ほかの2人がそばに寄っていくこともあり、すごく微笑ましくて。3人で笑っている姿を見るだけで、楽しくなりますね

 幸せも3倍だが、経済的負担も当然3倍。ミルク代、おむつ代だけでも毎月数万円が消えていくという。

地方では自家用車も必須ですが、チャイルドシートを3台設置するため車を買い替えざるを得なかったときはさすがに頭を抱えました(笑)。フリーランスになって以降は収入も減りましたので、経済的不安はもちろんあります。でもそれ以上に、毎日が幸せです

 日本では'22年から、43歳未満の女性に対する不妊治療は保険適用となった。助成金を設ける自治体も増え、不妊治療における経済的な負担は減ったといえる。

 だが子育てへの支援は決して十分ではない。現在の児童手当は、第1子・第2子では3歳未満で月1万5000円。3歳から高校生までは1万円と、1日あたり約300円の計算だ。

 桑子さんは1歳になった三つ子を春から保育園に預け、少しずつ仕事を再開している。「同じように子育てを頑張っている多胎ママに向けて、情報発信ができたら」と前向きだ。

 少子化が深刻な社会問題となるなか、産んだあとも安心して育てられる仕組みづくりは喫緊の課題。不妊治療を経て多胎ママとなった桑子さんの歩みは、子育てを日本社会全体で支える必要性を改めて問いかけている。

取材・文/植木淳子 

くわこ・えり 1985年生まれ。神奈川県川崎市出身。'08年から'21年まで青森放送でアナウンサーとして活躍。不妊治療を経て'25年に三つ子の男の子を出産