目指すは“日本一の70代”
「もうダメかもしれない」と精神が不安定になりかけたときは、あえて生きるモチベーションをつくることで気持ちを奮い立たせた。心のよりどころにしたのは、昨年完成した軽井沢の新居を整えることだった。
「がん予防には“温活”がいいと思って、フィンランドからサウナを輸入して、テラスを3日で造らせた。次に愛犬のアリーが快適に移動できるようにアストンマーチンを購入して、さらに自宅の庭を、スケッチして自分でデザインした。
『こんなときに何をやってるんだろう、俺はバカだな』とも思ったけど、これが諦めちゃいけないという生命力の呼び水になったね」
23年前に離婚し、昨年再婚した妻・早苗さんの献身的なサポートも大きな助けに。再婚のきっかけは、友人のテリー伊藤さんの番組への出演だったそう。
「僕に内緒で妻を呼んでいて、テリーが勝手に復縁したらどうかって、彼女に聞いたんだよ。そうしたらOKでびっくり! 孫のお祝いとかで、定期的に会ってはいたんだよ。がん治療の間は毎日、送り迎えして、食べられない僕に食事を作ってくれて本当に感謝です」
娘家族と暮らす妻とは今のところ、別居婚状態。軽井沢の別宅に行くときに声をかけ、一緒に過ごす。
「ただね、4日も一緒にいるとケンカになるから部屋は端と端。彼女に日当たりのいい部屋を譲って、僕は日の当たらない部屋に(笑)。価値観が違って腹が立つときもあるけど、お互いにリスペクトして、いい面を見るようにしているよ」
闘病中も自分自身、ファッションの手を抜かなかった。入院中は寝具やスリッパひとつにも気を配った。
「大病をすると『もういいや』となりがちだけど、僕にとっては無理してでもオシャレするのが『美学』。料理も一緒で、お惣菜も素敵な器に移し替える。侍みたいにカッコよく散りたいっていう信念があるし、『めんどくさい』と思った瞬間から老化が始まるからね」
怒濤の6か月を振り返って、「濃い半年だった」としみじみ語る。死線をさまよったからこそ、至った境地がある。人間は虫や植物と一緒で、大いなる自然に生かされている存在なのだということ。たまたま星の巡り合わせで、神がかり的に今を生きているのだと。
「病院選びや薬、医者選びも大事だけれど、それはあくまでサブ。自分を治すのは、結局のところ自分の生命力と美学だと思う」
いまだに喉の違和感は残っているものの、一時は水もコーラもお茶もすべて同じ味に感じられたという味覚は、現在7割がた戻ってきており、しっかり違いがわかるまで回復した。
「ここで死んでる場合じゃないんだよ。面倒でも自分に鞭打って、これからもずっとファッションや語学の勉強も欠かさず、常にアップデートしていくつもりだよ。目指すのは“日本一の70代”だからね!」
取材・文/荒木睦美


















