3人の視点人物たちは、それぞれが自分の“信じる道”を歩んでいく。
「私自身、複数のファンダムに所属していて、そこで会う友人との時間が大好きです。でも、“商品を買えば買うほど愛する対象との距離が縮まりますよ”といった構造の経済に対しては、警戒心が高いタイプ。本名も年齢も知らないまま人と話せる、どこか特別な空間でもあるファンダムに、資本主義が強烈に接続することには抵抗感があります。宗教も同じで、宗教自体は大切ですが、宗教ビジネスとなると警戒しますよね」
その時代を象徴する本として残り続けてくれたら
タイトルにもなっている「メガチャーチ(巨大な宗教コミュニティー)」や、プレイヤーを熱中させるためのゲームの仕組み、ファンダムと選挙、そして戦争との共通点など、本書の随所からは朝井さんの思考の源泉がうかがえる。
「生きる推進力を考えるとき、もともと“人間と依存”の関係に興味があることもあって、そうした情報にアクセスすることが多いんです。その過程で、似た関心領域の友人と話す機会があり、『メガチャーチ』を知りました。
今回の小説にはゲームの世界の話が出てきますが、人間と依存に関する分野においてゲームはすごく研究されていて、人を集中させるからくりが最も投下されているジャンルではないかといわれています。戦争については、民衆に“戦いたい”と思わせる推進力を与えるためにどういう演説がなされたのか、といったことが気になり、自然と関連書籍などを読んでいたように思います」
朝井さんいわく、本書にはページをめくりたくなるような工夫が施されているという。
「個人的に、前作の『生殖記』は小説としては非常に読みづらかったと思っているので、今回は次の展開が気になるよう、エンターテインメント感を大事にしました。何十年かあとに今の時代を年表にしたとき、そこからこぼれ落ちるであろうことが詰まっている小説になっていてほしいです。昔流行った香水のように、“使わないけれど持っているもの”のような感覚で、その時代を象徴する本として残り続けてくれたら本当にうれしいです」
最近の朝井さん
「9月に、雑誌連載をまとめた書籍『柚木麻子&朝井リョウ&でか美ちゃんの宇宙のどこにも見当たらないようなハロプロの話を50万字しよう』の発売ライブを予定しています。あまりに手弁当で、皆で会場をどうにか確保し、手数料が安いチケット会社を選別し……大わらわです。チャリティーライブでもあるので、ぜひチェックお願いします!」
取材・文/熊谷あづさ
朝井リョウ(あさい・りょう)/1989年、岐阜県生まれ。2009年『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。2013年『何者』で直木賞、2014年『世界地図の下書き』で坪田譲治文学賞、2021年『正欲』で柴田錬三郎賞受賞。他の作品に『スター』『死にがいを求めて生きているの』『生殖記』『時をかけるゆとり』『風と共にゆとりぬ』『そして誰もゆとらなくなった』など多数。



















