そしてCMの台詞にもなりましたが、殺陣は相手を思いやるところから始まります。でも人種も宗教も、バックグラウンドもまったく違う者同士が組み合うのですから、なかなかうまくいきませんでした。それでも諦めずに殺陣を日本の伝統芸能として理解してもらい、敬意をもって切磋琢磨していくと、最終的に殺陣がお互いの心をつなぎ、豊かにする鎹(かすがい)になるのだと改めて気づいたのです。それで、より殺陣を世界に広めたいと思う気持ちが強くなりました」(香純さん)
真摯な教えが評判を呼び、今では初心者からプロの俳優まで、多くの門下生を抱える。殺陣師としての道を切り開いていく中で大切にしているのは、仲間の絆だという。
「支えてくれた家族、仲間、生徒たちが私をここまで連れてきてくれました。切磋琢磨する者同士の輪が広がり、ともに稽古に励み、いつしか素晴らしい絆が生まれている。みんなのその純粋な気持ちが、私に一歩前進する勇気を与えてくれます」(香純さん)
自分を信じられる軸を持つことが、心の豊かさにつながる
3人の子の母でもある香純さんは現在、殺陣だけでなく、技斗(ぎとう)やアクションシーン全体の指導・構成を行っている。
「子育てが落ち着き、スタントコーディネーターとしてアメリカを基盤にさまざまな国で舞台や映画などの制作に携わらせていただくことが少しずつ増えてきました。今後は海外制作の経験を活かし、枠にとらわれずチャレンジして殺陣の普及に努めていきたい。いずれ日本が誇る『TATE(殺陣)』が、『ORIGAMI』や『MANGA』のように海外でも一般名詞になったらいいなと思っています」(香純さん)
最後に、香純さんが思う「心の豊かさ」とは何かを聞いた。
「自分を信じられる軸を持つことは、心の豊かさにつながると思っています。多方向から何を言われてもブレない『心の丹田』とでも言いましょうか。私の場合は、朝、外に出て太陽を浴びること、深呼吸すること、そして仕事前に少しでも自分のための稽古をすること。単純でも何か打ち込めることがあると、自分を信じられる材料になります。
そして執着で自分を縛らないことも大切です。もちろん状況にもよりますが、『私は〜でなくちゃいけない、〜しなくちゃいけない』と執着しすぎると見える光も見えなくなって、自分を追い詰めてしまいます。『大丈夫、死にはしない』というくらいの『いい加減』が生き方に余裕をもたらし、視界が開け、他人も自分も大切にできる。そして自然に感謝が生まれ、心の豊かさにつながるのではないかと思います」(香純さん)
CMを通して描かれる、人それぞれの心の豊かさ。その思いに触れることで、自分が大切にしている価値観について考えるきっかけになるはずだ。











