「母親だから」という理由で諦めてきた

 東京での華やかな芸能生活から一転、結婚・出産を機に夫の希望で長野県の山中へ移住を決めたのは20年ほど前のこと。見知らぬ土地での子育ては、決して楽なものではなかった。

「知り合いもいないし、夫には頼れなかった。2年おきに3人出産したので、子どもたちが小さいころは1人をおんぶしながら、もう1人と手をつないで、もう1人の世話をして……と、子どものことだけで1日が終わっていく日々でした」

 芸能界では、頼めばマネージャーが動いてくれる環境が当たり前だった。

「人生ってこんなに変わるんだって(苦笑)。お風呂に入っても子どもたちが何かしらやらかすので、自分の身体や顔をまともに洗えないんです。常におんぶしているから背中はガチガチで、子どもの泣き声を聞くだけで憂鬱になる時期もありました」

 子育ての大変さを経験してきたからこそ、故郷である熊本に、親たちが育児の悩みや、たわいもないことを話し合ったり、息抜きができる場所をつくりたいという思いが生まれた。

こども食堂「はーちゃん食堂」を運営している井上晴美
こども食堂「はーちゃん食堂」を運営している井上晴美
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「子どもたちと過ごした時間はかけがえのないものだったと今なら思えるんですけど、当時のつらさも忘れられないですからね。子どもも大人も元気になってほしいんです」

 必然的に家庭を優先する形になっていたが、時は流れるもの。離婚を経験、その後子どもたちは無事に成長した。自身も50代に突入し、余裕も生まれてきた中で挑戦したのが、8月に同時発売された自身初のデジタル写真集『Le Rouge et le Noir』と『或る女』(共に講談社)だ。

「母親でいる時間があまりにも長すぎて、自分を見つめ直す機会もありませんでした。今回グラビア撮影のオファーをいただけたことで、そろそろ動き出してもいいのかなって」

 これまでは「母親だから」という理由で諦めてきたことが多かったと振り返る。

「毎朝お弁当を作って車で送って……昔はあんなに1人の時間が欲しいと願っていたのに、この毎日が終わると思うと寂しくなるんです(笑)。子どもたちがいなくなったあとに無気力になったりしないように、今後は自分のことも真剣に考えなくちゃいけない。またお芝居をやってみたいという気持ちもありますし、いろいろな仕事に挑戦する姿を子どもたちに見てもらいたいですね」