ファンタジー化した’10年代の嫁姑バトル

 ’10年代に入ると、新たな嫁姑関係が描かれるように。テレビ朝日系ドラマ『おトメさん』では、黒木瞳と相武紗季が演じた嫁姑は、それまでのイビる姑・耐える嫁という立場が逆転。

「そのうえ、黒木も姑の影を引きずり続けるという役どころ。ドラマのうえでの嫁姑問題は、確執の根深さにスポットを当てることが減り、“ネタ”としてコミカルに描かれることが多くなりました」

 結婚した女性たちの多くは、どこか根底に嫁姑関係のモヤモヤを抱えている。そのリアリティーをスパイスとして巧みに使い、’10年にフジテレビ系で放送された『花嫁のれん』や’14年の朝ドラ『マッサン』でも嫁姑バトルは演出上、欠かせないものとなっていた。

 しかし現代のように、女性たちの支持や共感を得づらくなったことで今後、嫁姑ドラマは絶滅してしまうかもしれないと宝泉さん。

「ドラマの変遷を追ってわかったのですが、嫁姑ドラマは少数精鋭。嫁をイジメる姑も、イジメられる嫁も、演じられる人が限られている。特にイビリ役は難しくて、初井言榮や赤木春恵、野際陽子のように、ただイヤな姑を演じるだけでなく、度量の大きさも見せなくてはならないので、演技力が大事なんです。そして何といっても、ドラマは脚本ありき。橋田氏が脚本を書かなければ、嫁姑ドラマは絶滅してしまうかもしれませんね」

 宝泉さんは、現代の嫁姑が共感できるようなテーマとして、こんな提案も。

「介護や相続という要素を含めた嫁姑ドラマがいいかもしれませんね。個人的には、『渡鬼』で、えなりくんが結婚した後の嫁姑を描いた作品をぜひ見たいのですが……」

 現代の嫁姑と同じくドラマの中でも“鬼”は身を潜めてしまっている。

(取材・文/小島裕子、本誌「嫁姑」取材班)