嫁姑ドラマの走りは’70年代

 先駆けはもちろん、橋田壽賀子氏の『となりの芝生』だった。

「橋田氏はこのドラマで、それまであったホームドラマの価値観をひっくり返したのです。アットホームで心温まるストーリーが多かった時代に、嫁姑の確執を描くことで、その平和を打ち砕きました。橋田氏はのちに“自分の経験を生かしている”と語っています。嫁姑問題のリアルを社会に知らしめたこの作品は、多くの視聴者から共感を得ました」

 自身の経験を反映した橋田作品はリアリティーがあり“夫の家に嫁が入る”という結びつきだけではなく“夫と妻、そこに付随する夫側の家族と嫁側の家族、渦巻く人間模様”という様相を提示したのだ。

 ’77年からはフジテレビ系『ライオン奥様劇場・嫁姑シリーズ』でも全9作品が放送された。

女性の社会進出が進んだ’80年代

 続く’80年代は、’70年代に比べると、いかにもドロドロな嫁姑バトルをテーマにしたドラマは減った。

「その背景には女性の社会進出が挙げられます。またバブル時代であったために、ドラマを放送している時間帯にみんな外へ出ていたのでしょう」

 そんな中でも嫁姑関係のリアルを切り取ったのは、やはり橋田ドラマ。NHK大河ドラマ『おんな太閤記』、朝の連続テレビ小説『おしん』も主婦の支持を得た。

 特におしんでは、嫁姑対決の舞台になった佐賀県から“イメージダウンになりかねない”とクレームが入るほどのイビリだった。

「“開墾をしろ”という姑に対して“髪結いで稼ぎたい”というおしん。これは、“郷に入っては郷に従え”という姑の精神に火をつけたでしょうね。おしんの、自分の仕事をするという自己主張を貫く姿は当時の嫁世代に受け入れられて、平均視聴率は52.6%。テレビドラマ史上、最高視聴率を記録しています」

【写真】橋田氏が脚本を手がけたTBS系ホームドラマ『渡る世間は鬼ばかり』
【写真】橋田氏が脚本を手がけたTBS系ホームドラマ『渡る世間は鬼ばかり』

 そして、いよいよ『渡る世間は鬼ばかり』が登場ーー。