この春、天皇・皇后両陛下は奈良県の神武天皇陵を参拝される予定だという。

 皇室を長年取材するジャーナリストで文化学園大学客員教授の渡辺みどりさんは、皇室内の"歴史教育"について、とあるエピソードを明かした。

「1970年代、美智子さまが皇太子妃時代にお住まいだった東宮御所を私が訪れたときのことです。本棚に『かみさまのおはなし』という、『古事記』に書かれた日本の神話を子ども向けにした童話があるのを見かけました。

 両陛下は、皇太子さまや秋篠宮さまや黒田清子さんが幼いころから、日本の成り立ちや皇室の先祖の伝承について、きちんと教育されているのだなと思いました」(渡辺さん)

 それから約40年、皇后美智子さまの“教育の成果”は、孫の世代まで着実に伝わっているようだ……。

 宮内庁関係者は、天皇ご一家のこの春の予定について説明する。

「4月3日は、初代の天皇とされる神武天皇が崩御してから2600年にあたる式年祭が行われ、天皇・皇后両陛下は奈良県の神武天皇陵を参拝される予定になっています。

 100年前に、大正天皇が参拝した前例もあります。陵の隣にあり神武天皇を祀っている橿原神宮にも、両陛下はお立ち寄りになることも検討されています」

 75年前の「紀元二千六百年」を思い浮かべる人もいるかもしれないが、当時は神武天皇が即位したとされる年を祝うもので、今回は没してから2600年の節目にあたる。

 新大阪駅から電車を乗り継いで1時間余り。奈良盆地南部にある畝傍山のふもとに、神武天皇陵と橿原神宮は隣接している。

「神武天皇は、『古事記』や『日本書記』に、125代続く天皇の初代として伝承がありますが、戦後の古代史学界では、疑問視されてきました」

 そう説明するのは、皇室制度史に詳しい京都産業大学名誉教授の所功さん。

「しかし、最近では第10代の崇神天皇が3世紀前半ごろ実在されたと判明しました。従って、それからさかのぼり、初代の大王は1世紀前半ごろ、現在の神武天皇陵や橿原神宮のある周辺に、拠点を築かれた可能性は研究者の間でも認められつつあります」(所さん)