犬も失敗するというのは大前提

障害物のベンチをよけて歩行する訓練
障害物のベンチをよけて歩行する訓練
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 訓練を見学すると、犬は歩行ルートの真ん中に置かれた横長のベンチを避けて通った。ただし、ミスをすることも。

「犬も失敗するというのは大前提です。人間だって、ボーッとしていて素通りしちゃうことってありますよね。犬もほかのことを考えていたら、段差などを素通りすることがあります」(多和田さん)

 たまたま通りがかった盲導犬に「かわいい~」などとちょっかいを出してはいけない。集中力を奪わないように。

「信号機のある交差点で犬は止まります。青信号か赤信号かを理解して止まるのではありません。車イスのスロープとして低くなっている約2センチの段差を判断して止まるんです。青信号を判断するのはユーザーです」(多和田さん)

 カッコウなど鳥の鳴き声で知らせる信号機が普及しているが、すべてではない。ユーザーは、進行方向が同じ車の音などで判断するという。

「たとえば、後ろから来た車が左折してきてぶつかりそうだったり、前方から来た右折車とぶつかりそうなとき犬は止まります。『ゴー(進め)』と言われても動きません。指示よりも、この場面は止まるはずだ、という判断を優先させるんです」(多和田さん)

 飲食店では伏せてじっと待つ。ユーザーやよそのテーブルの飲食物に手をのばすことはない。野外BBQで肉を焼いても興味を示さないという。

「勝手に食べ物をあげようとしないでください。盲導犬は排尿・排便まで管理されています。決まった時間に決まった食べ物を決まった量だけ食べる。予定にない食べ物を与えられたらいつ出てくるかわからなくなる」(多和田さん)