女優・筒井真理子さん「”好きだ”の文字がないラブレターで知性を感じた」

筒井真理子さん◎つつい・まりこ 女優。第三舞台の看板女優から映画、ドラマで活躍。映画『淵に立つ』で毎日映画コンクール、ヨコハマ映画祭、高崎映画祭で女優賞3冠を達成
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Q1.普段はどんな手紙を書きますか?

「手紙は大学生のころから大好き。切手とハガキの組み合わせを考えるのも楽しいですよね。ハガキはついたくさん買っちゃうので、季節ごとに仕分けしてファイルにまとめています。字がきれいに見える筆記用具を集めるのも好きですね。

 仕事が終わった後、ちょっと思いついた相手にハガキを書くことが多いです。相手の顔を思い浮かべながら書くのは楽しいですよね。ロケで地方に行ったときなんかは、《京都にて》なんて入れちゃってね。でも、私ドジで京都の “都” の字を間違えて “者” だけにしちゃって、あとから “ああ、京者から届いてたよ” なんて言われたり(笑)」

Q2.忘れられない手紙の思い出は?

「今回、手紙を書いた恩師は中学の英語の先生です。出身地の山梨の県立図書館で朗読のイベントに招かれたとき、先生が花束を持って来てくれたんです。 “あなたはナイーブで大丈夫かな~と思うような、ちゃんと生き抜いていけるか心配な子でしたね” なんて言われて(笑)。

 大学生のころ、1度だけラブレターをもらったことがあるんです。便箋2枚にわたって、私をどこそこで見かけたという景色が書いてありました。印象的だったのは、好きだとか暑苦しいことは一切書かずに、彼が見た私がいる景色だけを書いただけのスパーッとした切れ味の文章だったこと。頭がキレる人なんだろうなと思って、会ってみようかなという気になりましたね。実際、ちょっとお付き合いはしたんですけど(笑)」

【筒井真理子さんから恩師への手紙】故郷・山梨の中学時代の英語の先生にあてたハガキ

Q3.あなたにとって手紙とは?

「いい距離感をもったツールですね。ふわっと来てふわっと返せる伝達手段。ひょっこりやって来るというか。相手の時間の邪魔をしないで気軽に “あ、ちょっと寄ったから” みたいな感じ、それがいいんですよ」

干物専門仲卸『村和』三代目・村山浩三さん「うつ病で入院中の母へ」

村山浩三さん◎むらやま・こうぞう『村和』三代目。高校卒業後、貝類の仲卸を経験しテリー伊藤率いるテレビ制作会社に入社。さまざまな葛藤、心の旅の果てに家業を継ぐことを決意

Q1.普段はどんな手紙を書きますか?

「築地でのうちの商売は今もアナログ。お客さんの注文どおりに品物がそろえられなかったときのご連絡、値上げのお知らせ、仲よくなりたい取引先へのご挨拶などすべて手書きの手紙です。昨年、豊洲市場での場所を決める店舗抽選会で3社の鮮魚屋の社長から “一緒に組もう” と事前に誘われましたが、手紙でお断りしました。築地には仲のいい店同士が組んで抽選することがよくあります。でも3社とも鮮魚を扱うだけあって気性が荒い。干物屋は少し離れて平和にやれるほうがいいと思ったんです。

 面と向かって詫びても、互いに忙しいなかで本心が伝わらないと思って、手紙に託しました。《本当にあなたのことが大好きだけど、今回はごめんなさい》と。大切な話は、手紙がいちばん真意が伝わると思っています」

Q2.忘れられない手紙の思い出は?

「子どものときは、両親や祖父母の誕生日にはプレゼントに手紙を渡しました。兄の結婚式ではご祝儀に包めるお金がなくて、かわりに感謝の気持ちを手紙にしましたね。《出世払いで勘弁してください》とひと言添えて。僕は反抗してばかりだったので、よけいに兄は感動して号泣したと言っていました。学生のころは、悪いことをしたときに “なぜそんなことをしたか” 手紙で両親に告白するのにも手紙を使っていました。26歳で出会った奥さんには毎晩、日記のような手紙を綴っていたようです。人見知りなので、手紙という手段で相手との距離をとろうとしてきたのかもしれません」

【村山浩三さんから・入院中の母親へ/お見舞いの手紙】「今回は、うつ病で入院している70歳の母親へ久しぶりの手紙を書きました」(村山さん)

Q3.あなたにとって手紙とは?

「手紙はハガキ、便箋選びからどんなペンを使って書くか、どんな字で何を伝えるのか、すべてがそのときの自分の心の表れだと思っています。素直に気持ちや情熱を表すことができて、自分の人間性をわかってもらえる最高の手段ですね」