70代の「今」が楽しい!

 ニトリは現在「’22年に1千店舗、売上高1兆円」という目標を掲げている。

できそうもない数字を上げて、それに果敢に挑戦していくのがわが社の社風なんです。でも、できなかったらすいませんと(笑)。失敗しても会社がつぶれることがなく、やり直しがきけばいいんじゃないかなと思っています」

 とにかく決めることが大事で、取り組むうちに障害がでてきたら、走りながら乗り越えていく。人生は障害物競走なのだと言う。「悔いのない人生」がモットーなので、やってみて失敗しても悔いは残らないのだとも。

僕はとにかく人を喜ばすことが大好きなんですね。これはお袋の遺伝だと思います。顔も似ているんですよ。でも、そのお袋とも遺産をめぐって裁判となり、現在は法律“和解”していますが、お墓参りもさせてもらえないんです。死ぬまで和解できないかもしれませんね。家系的にそれを繰り返しているところがあって。自分の子どもとはそうなりたくないなと思いますが……」

 冗談を交え終始、場を和ませていたが、移動の車中で一瞬、しんみりとした表情を覗かせた。そして、似鳥さんは再び屈託のない笑顔に戻ると、こう語ってくれた。

「たとえクタクタになっても一銭の得にならなくても、人が喜んでくれる顔を見るのが好きで生きがいなんです。まぁ、それでいつ死んでも本望ならそうしなさいと、家内にも言われます。この世にないものをつくるとか何でもいいので、世のため人のため喜んでもらえることを死ぬまで続けていきたい。それが人生最大の幸せだと思っています」

「“男は度胸、女は愛嬌”と言うが、男性にも女性にもその両方が必要」と語る 撮影/渡邉智裕
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 似鳥さんは70代になったとき、もう60代のような楽しいことは起こらないだろうと思ったそうだが、今すべてがグローバルに広がって、さらに面白くなってきたと話す。

「80代は生きているかわからないけど、もっと楽しい人生になると思う。そうつくっていきたいなと思います」

 妻と師と出会い、劣等生人生にさよならした似鳥さん。世界の暮らしを豊かにしたいと奔走し続ける。

 時代が求めているのは「安さと品質」。人が惹きつけられるのは「度胸と愛嬌」。それを実現し体現するのは、「お、ねだん以上。」なロマンティストの愛すべきリーダーだった。

取材・文/森きわこ

もりきわこ ライター。東京都出身。人物取材、ドキュメンタリーを中心に各種メディアで執筆。13年間の専業主婦生活の後、コンサルティング会社で働く。社会人2人の母。好きな言葉は「やり直しのきく人生」。