訪問看護師や介護者が受けるケア・ハラスメントの実態をこのままにしておいてはいけないと、藤田氏は今年立ち上げた『訪問看護師等が利用者・家族から受ける暴力対策検討会』の前身となる、『訪問看護師を暴力から守る会』を設立し、これらの暴力を公表。世間に対し、在宅医療における闇の問題を投げかけた。

 ところが、藤田氏を待ち受けていたのは、同業者を含む世間からの厳しい批判の声だったという。

「“仕事中にお茶なんて飲むから自業自得”、“利用者を売るの?”、“人手不足が深刻になったらどうするんだ”、“暴力に遭うのは看護技術の未熟によるもの”といった厳しい意見が寄せられました」

 思った以上の多くの非難に、問題に立ち向かう歩みを止めることもあった。しかし、それでも一歩ずつ前進し続けてきた。

 その活動が、事件から6年の歳月を経て、今ようやく大きな実を結び始めている。

 兵庫県では今年、「訪問看護師・訪問介護員安全確保・離職防止対策事業」が立ち上がり、この事業に対し約926万円の予算がついた。そして、利用者等の暴力のために単独訪問が難しく、2人以上の訪問が必要な場合には、県から費用が補助される計画が進んでいる。

 また、全国の訪問看護事業者で構成される「全国訪問看護事業協会」では、本年度中に、訪問看護師が利用者から受ける暴力やセクハラの被害の実態を把握するための全国調査を実施することが決定した。

 もちろん、利用者もサービスの内容に要望があれば、口にすることも大切だ。

「“こうしてほしい”ということがあったら、遠慮なく訪問サービスに入っているスタッフに相談してよいのです。そして、ルールの範囲内でできることをお互いにすり合わせて、いちばんよい方法を見つけていきましょう。

 怒鳴ったり、小突いたりなどの暴力に訴えることなく、話し合いでお互いの要求を理解しあうこと。それが、満足度の高いサービスを受けるために最良の方法なのです」(藤田氏)