愛は壊れ物と知っているから仲が良い
ときちゃんとトムちゃんが出会ったのは約30年前。現在は業界でも有名なオシドリ夫婦で、時にはケンカをすることがあっても、決して長引かないのだそう。
「また仲よくなるのを、2人とも知っているから……あと同時に、決定的なことが起こりうるっていうのも、わかっているからかな。お別れとか、最悪なことはいつだって起こる可能性がある。だからそうならないようにしようって、お互い思っているんです」
トムさんは2004年に脳内出血で倒れ、以来ずっと介護が必要。木皿泉の闘病日記を読んだ結婚直前の女性に、「ここまで夫にできるかと不安。マリッジブルーです」と言われたときちゃん、「私の幸せは私だけのもの」と本書で憤る。
「もともと私は、人と自分を比べません。他人のフィールドで勝負するより、ほかで勝つことを考えたほうがいいでしょ? 私は私!(笑)」
自分の幸せは自分だけのもの。誰かと比べて“できるできない”で一喜一憂することに意味はないのだ。
「仕事だってそう。あの女優さんがキレイとか、この脚本家がうまいとかって、結局、それ以上が出てきたらアウトじゃないですか。だからこそ“私は人のやらないことをやっていこう”って考えて、行動しなきゃいけない。ちなみに木皿泉のエッセイでは、夫婦仲よしな様子を書くことが、それにあたります!」
仕事上、必要に迫られてといえばそれまでですが、2人の熱量の高い会話は刺激的で、思いやりを与え合う日々は、素直に「すてきだな」と声に出してしまう温かみがある。
「仲のよさをうらやましがられるの、実はよくわからないんですけどね(笑)。みんなも仲よくすればいいじゃないって話ですし。また、私たちも我慢すべきところは我慢しているんです。ただそれを“我慢”とは思っていないけど(笑)」