少年野球チームでもアドバイス

 さまざまな競技のプロアスリートの支援のみならず、食育に悩む人々への発信活動も少しずつ始めている。『しまふく寮通信』(コンサドーレ札幌刊)『Jリーグの技あり寮ごはん』(メディアファクトリー)の出版のほか、チーズメーカー『QBB』のサイトで毎月2品のレシピを紹介する活動も手がけるようになった。さらには少年野球チームで講演も実施。スポーツに携わる親子の食事への意識を前向きに変えたいという思いは日に日に強まっている。

「少年野球の場合、朝8時から夜9時まで練習するチームもあって、選手たちは2リットルのご飯を持参し、お茶漬けにして食べるといいます。これには驚きました。色とりどりのお弁当を持参できないなら、魚肉ソーセージやヨーグルト、ゼリーを加えて手軽に栄養価を上げることも可能だと思います。

“1・3リットルのお弁当を持ってこい”と監督に言われて、どうしたらいいかわからないというお母さん方の声も耳にしました。監督は栄養バランスのいい食事をとらせようとしてそう言っているんでしょうけど、親御さんが対応できずに悩むケースが少なくない。日本のアスリートを取り巻く環境は、栄養次第でもっとよくなるはず。自分が少しでも役に立てればありがたいです

 明子さんはそう言って、目を輝かせた。

 よきアドバイザーである大前さんも、「村野さんのような方にスポーツ栄養の重要性をもっと発信してもらえればいいですね。少しの工夫で栄養バランスがよくなり、食べる人も幸せになるのなら理想的。これからも情報交換を続けたいです」と、エールを送った。

 妻の八面六臂(はちめんろっぴ)の大活躍に晋さんは「人に認められて楽しそうに働く妻の姿を見るのは僕のほうもうれしいです」と爽やかな笑顔を見せた。「パパ、豆腐10丁買ってきて」と言われて、せっせと買い物に行き、寮を管理する夫。その力強いサポートを受けながら、明子さんは、これからもサッカー界、スポーツ界を食の部分からしっかりと支えていくことだろう。

取材・文/元川悦子

撮影/齋藤周造