一方のタオル市場はというと、ブランドのロゴがドンと入った派手めなOEM商品が主流で、どれだけ有名なブランドとライセンス契約できるかがカギ。自社ブランドは売れない時代だった。

 そんな折の1999年、本州と今治を結ぶしまなみ海道が開通する。新たな需要が見込めると踏んだ池内さんは、「地球環境によいものづくりがしたい」と、自社ブランド「IKT」を立ち上げた。今も定番になっているオーガニックコットン100%の商品「オーガニック120」がそれだ。環境負荷を最小限に抑えるため、製織工場の使用電力100%を風力発電で間接的に賄ったこのタオルは、「風で織るタオル」の愛称で多くの人に受け入れられた。

天国から奈落へーー

 日本初の本格的なオーガニック・テキスタイルを手に挑んだニューヨークの国際的なテキスタイルショーでは最優秀賞を受賞。2003年初頭には、当時の首相・小泉純一郎さんが「日本が誇る地方の企業」と言及したことで、取材や注文が殺到した。同年5月に放映された『ニュースステーション』での特集はさらに反響が大きく、全国のデパート約100社から取引の申し込みが入るほど。

2012年、ニューヨーク・ホームテキスタイルショーで最優秀賞を受賞
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 しかし、国内外での事業展開が整い、これからというときに売り上げの7割を占めていた取引先の問屋が経営破綻。売掛金は焦げついた2億4千万円を合わせ、約10億円にのぼった。まさに、天国から奈落─。

 当時のことを、生産部門部長の渡邉惠さんは次のように振り返る。

「つらかったであろうこの時期、池内の態度は何も変わりませんでした。ですから私たち社員は不安に思うことなく、普段どおり仕事をすることができたんです」

 同年9月9日、池内さんは、ライセンスはやめてIKT1本で会社を再建すべく、民事再生の適用を申請する。民事再生は、再生計画を立てて、債権者の半数以上に納得してもらえて初めて適用が認可されるもの。このとき、保留にしたのは1社のみで残りはみな賛成であった。翌10日の債権者会議では「ここの説明はいいから、早く東京に行って取引先に謝ってこい!」という声や、「売り場のスペースを倍にしてやる」とまで言ってくれたデパートもあったという。

「“何枚タオルを買えば続けられますか?”と言ってくださったエンドユーザーもいて。たぶん、そんなふうに頑張れという声が届かなければ、あそこまでのパワーは出なかったと思います」

 多くの声に勇気をもらい、窮地を凌いだ池内さん。後から調べたところ、売り上げの半分は担っているだろうと思っていたIKTの売り上げは全体のわずか数%だった。

 このときの再生劇を別の角度から見ていた人物がいる。現社長の阿部哲也さんだ。

「実は私の前職はカジュアルウエアの小売りで、そこで民事再生を経験しているんです。その会社はスポンサーが入ったにもかかわらず、事業は継続しないと判断されたのですが、かたや池内さんは立派に営業を継続されている。どうしてなんだろう? と、すごく興味がありました。

 実際に会うまでは、海千山千なタイプかと思っていましたが、本当に屈託のない純粋な人。普通に考えたら、クリーンエネルギー100%なんて稟議で否決されますよ。コストが高すぎるって。同業だったら絶対にやらないことをやってのけるのが池内さん。その突き抜け方がハンパじゃない。その点で、スティーブ・ジョブズとかぶりますよね

 IKEUCHI ORGANICのオリジナル商品はほぼ池内さんのアイデアから作られているという。