1億円プレイヤーとの出会いへ

 最初のシーズンは奇跡の4連勝から20連敗と天国から地獄へ突き落とされたが、2年目は34勝20敗と勝率は6割3分にまで伸びた。スポンサーの期待値も目に見えて高まった。

 チーム強化のメドがつき、次は結果と集客向上。そこで大きな賭けに出る。田臥に続く日本2番目となるNBA契約を結んだスター選手である富樫の獲得に乗り出したのだ。

「富樫とは同じ新潟出身。2014年に初めて会った日、富樫が私の名刺の入った財布を落とし、拾った人から私に連絡が来るという奇妙な縁があって、連絡をとるようになりました。その後、NBAとの契約が満了になり、リオ五輪予選に挑む日本代表からもはずれた富樫に“ウチに来ないか”と声をかけ、2015年9月に契約にこぎつけました」

日本代表の活躍も期待される富樫選手と島田さん 
日本代表の活躍も期待される富樫選手と島田さん 
【写真】1億円プレイヤー富樫勇樹と喜びを分かち合う島田会長

 富樫は大きな力をもらったと語る。

「島田さんは熱い人。話すたびに情熱が伝わってきましたね。いちばん心に響いたのは“千葉ジェッツの選手として東京五輪に出場してほしい”という言葉。自分にとっても東京五輪は大きな目標。ジェッツと一緒に成長して大舞台を目指したいと思ったんです」

 富樫というビッグネームが加わり、2016年から大野篤史ヘッドコーチ体制へ移行して迎えたBリーグ元年。2017年1月の天皇杯で初優勝。そこから天皇杯3連覇を果たすまでにジャンプアップする。Bリーグも'17―'18年、'18―'19年シーズンと東地区で2年連続優勝。日本バスケ界屈指の強豪クラブへと上り詰めた。

 閑古鳥が鳴いていたはずの船橋アリーナも超満員の観客で、売り上げも急増。島田社長就任から7年目の'18―'19年シーズンは17億円に達した。2万人収容のスタジアムを保有する同じ県内のジェフユナイテッド千葉の売り上げが29億円弱だから、5000人収容のアリーナを本拠地とするジェッツがどれだけ健闘したかよくわかるだろう。

「みんながハッピーになるクラブ」という約束どおり、島田は富樫をBリーグ初の1億円プレーヤーにし、社員の給与を上げるなど環境改善を図ってきた。そしてこの8月、29歳の米盛勇哉を新社長に据え、自らは会長となって第一線を退くことを決意した。