「写真をバラまいてやる!」元妻が暴走

「とにかく会わないと始まらないわ! 逃げるつもりなの? やましいことがないなら来なさいよ!!」

 元妻は薫さんとの直談判を望んでおり、一方的に「3月13日15時に〇〇駅の××喫茶店に来なさい!」と時間や場所を指定してくるのですが、薫さんは元妻の勢いに身の危険を感じていました。直接会ったら何をされるかわからないので、「平日の昼間は無理です。仕事もあるし、繁忙期なのでご理解ください」と返し、会うか会わないのかを曖昧(あいまい)にしたまま、時間を稼ぎ続けたのです。

 婚姻している夫婦間には貞操義務(配偶者以外の異性と性交渉に及んではならない)が存在します(民法752条)。もし婚姻期間中に、元妻が薫さんに対して幹介さんと別れるようLINEを送っていたなら特に問題ありません。しかし、今回のケースは離婚後で、離婚した元夫婦間に貞操義務は存在しません。だから薫さんは「だったら離婚しなければよかったでしょ? まだ彼のことが好きなんじゃないですか? もう手遅れですよ」と返事をしたのですが、むしろ火に油を注いでしまったようで……。

「それなら、あの写真をバラまいてやるわ! 手始めに会社の部長に送りつけてやろうかしら。何度言っても別れないんだから、覚悟はできているんでしょうね!?」

 前述のとおり、薫さんと彼は同じ会社に勤めていますが、もし、会社の部長が二人の半裸の写真を見たら大変なことになります。元妻はこの写真だけでなく、薫さんのせいで幹介氏が離婚を考え始め、家庭を壊されたということも部長に伝えるでしょう。元妻は会社に幹介氏の処分は求めないかもしれませんが、薫さんへの処分を要求する可能性は高く、最終的に社内で薫さんの居場所がなくなり、自主退職を余儀なくされることも考えられます。

 薫さんからこのことを聞いた幹介氏は、急いでパソコンのデータを消そうとしたのですが、すでに手遅れ。元妻いわくUSBメモリや外付けハードディスク、オンラインストレージ……ありとあらゆる場所にデータをコピーしており、幹介氏と薫さんが元妻の画像の保存先をすべて特定し、データを削除するのは無理な状況でした。絶望する二人に対して、元妻はさらなる追い打ちをかけてきたのです。

(後編に続く)

※後編は3月11日16時30分に公開します。


露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)
1980年12月24日生まれ。國學院大學法学部卒。行政書士、ファイナンシャルプランナー。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化して、行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界で最大規模に成長させる。新聞やウェブメディアで執筆多数。著書に『男の離婚ケイカク クソ嫁からは逃げたもん勝ち なる早で! ! ! ! ! 慰謝料・親権・養育費・財産分与・不倫・調停』(主婦と生活社)など。
公式サイト http://www.tuyuki-office.jp/