妻が語る夫・勇一郎

同階に住む住人は「気づけなかった」と今も胸を痛めている
同階に住む住人は「気づけなかった」と今も胸を痛めている
【写真】心愛ちゃんが書いた「自分への手紙」には“あきらめないで”の文字も 

 事件現場となった野田市のアパートに移り住んでからは虐待が日常化していった。心愛ちゃんは家の鍵を持たされておらず下校後は毎日のように同級生の家で過ごしていた。勇一郎が同級生の家に迎えに行っていたが、

「お父さんが相手のお宅に“お邪魔してすみません”と菓子折りを持ってやってきて丁寧すぎて怖いくらいにお礼を言ってきたそうです」

 と近隣の主婦が明かす。そんな外面のよい父親について心愛ちゃんは友人に「お父さんが怖い」と本音を漏らしていた。

 母親のなぎさは当時の様子について、

「心愛に話を聞いたら“毎日が地獄だった。夜中にパパに起こされたり立たされたりする”と言っていた。心愛を助けてあげたくても勇一郎の監視や束縛が激しかったためどうすることもできなかった。(勇一郎が)怖かった」

 と、第三回公判でビデオ越しに涙ながらに証言。

 なぎさもまた、勇一郎によるDV支配の被害者だったことが認められ、懲役2年6か月、執行猶予5年の判決を受けている。

 裁判の傍聴を続け、加害者家族のケアをするNPO法人『ワールドオープンハート』の阿部恭子代表は事件後から勇一郎の両親のケアをしていた。勇一郎について、

「(罪を)後悔はしていると思うが、心からの反省はしていないと思う。自分がしていたことが虐待だという認識がないとみられる。どことなく心愛さんのせいにしているところを感じる。反省する心があったらこんなことにはなっていない」

 と法廷での勇一郎を評した。続けて、

「勇一郎被告は性格的に歪んでいる。心愛ちゃんへの虐待が暴力に加えて屈辱を与える行為からもうかがえます。汚物を持たせたり、失禁させたり……。母親(なぎさ)は嫌がらせと言っていましたが、まさにそれで、嫌がることをネチネチとしているな、と感じました。被告の言うように“いい父親になりたくてやった”しつけの延長線上じゃないような気がします。心愛ちゃんのことが単純に嫌い、辱めてやるという感じです。心愛ちゃんのこと、好きじゃなかったのかもしれません」

 と、勇一郎の心情を分析した。

 母・なぎさも公判で、

「心愛の正義感のある性格が(勇一郎は)嫌いだったんだと思います」

 と証言している。