妹が語る兄・勇一郎

 '16年4月から勇一郎が派遣社員として在籍していた沖縄観光コンベンションビューロー東京事務所の上司は、

「非常に温厚で穏やかでコミュニケーション能力もあった」

 と評したが、同社で働いていたころを知る知人は、

「上から目線でプライドが高く仕事を頼みにくかった」

 と真逆の印象を持つ。

 勇一郎の二面性は家族の中でも力の弱い妹だけは気づいていた。

 2月25日に開かれた第二回公判では母親の凪子さんと妹の紗栄子さん(30代・仮名)の証人尋問が行われ、母親が勇一郎をかばう証言を続ける中、兄について、

「自分より地位の高い人にはいい態度で接するが、低い人にはそうではない」

 と言い、心愛ちゃんが自宅から祖父母宅になぎさに連れてこられてきた'18年9月ごろ、勇一郎による暴行の痕があったことを証言した。

 紗栄子さんによると、心愛ちゃんの頭には髪が抜けた跡があり、首回りも真っ白になっていて、頬のあたりには1センチほどのアザが2か所あった。全身の状況を確認したところ、腰と尻にもいずれも3センチほどのアザがあった。理由を心愛ちゃんに尋ねると泣きながら勇一郎からの暴力を打ち明けたという。次に(暴力が)あったら通報することを約束したのが心愛ちゃんとの最後の会話になってしまった。

 紗栄子さんは法廷で、

「ごめんね」

 と何度も涙を流したが、勇一郎はその間も微動だにしなかった。