“上が決めたこと”は、まだある。最近、野間さんら派遣社員は席替えを命じられた。それも派遣同士は近くに座らず、席をなるべく離すよう指示されたのだ。だが、1フロアに100人以上がひしめき合う職場で席を離して座る余裕はない。

派遣社員である野間さんは、コロナ騒動を通じて社員との「テレワーク格差」を実感する
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「それでは感染予防にならないのでは?」と言う野間さんに、上司は「予防のためではない。何かあったときに業務を遂行するため」と、そう断言した。

 もし感染者が出ても、離れた席にいれば濃厚接触にならず、残りのメンバーで業務を進められるという理屈だ。

「人権侵害というか、派遣のことはそのぐらいにしか見ていないんだなと思って、本当にショックです」

 あらゆる会社には、労働者が安全に働けるよう配慮する「安全配慮義務」が法律で定められている。非正規にも当然、その義務はおよぶ。

「社員と仕事内容は変わらず、派遣の力に頼り切っている業務もたくさんあるのに、この待遇の違いは納得いきません」

非正規シングルにはなんの補償もナシ!

 非正規が直面する苦境はテレワーク格差だけではない。休業補償や賃金の支払いでも不利な扱いを受けることが多く、深刻な影響がおよぶ。

「新型コロナの影響で、ほぼレギュラーで入っていた仕事が3月はゼロに。この先も続くのではないかと不安です」

 そう話す武藤里香さん(43)はアルバイトのほか、フリーランスとして仕事を請け負う業務委託など、5つの仕事をかけ持ちしている。なかでも試験監督のアルバイトは収入の柱のひとつ。そのため英語検定試験『TOEIC』の中止は痛かった。ほぼ毎月実施され、1日働けば8000円ほど得られたからだ。

「政府による休業補償の対象は子どもがいる人だけ。シングルには無関係です。試験監督が休業になっても、アルバイト先からは何の説明もなければ、補償もない。それでも実家住まいなのでどうにか暮らせていますが、もともと非正規の仕事は不安定なうえに、今回は天災も重なって、先が見通せません」(武藤さん)