相談電話では、非正規職員へのあからさまな差別的処遇を訴えるものも少なくない。以下、短く列記する。相談者はみな、女性である。

●古谷順子さんは学校給食のパート調理員。学校閉鎖のあと、学校給食も休業となると、会社は「正社員には休業手当を払う」と連絡した。ところが、パート職員には「生活が大変な人には、会社が緊急で無利子でお金を貸します」と告げたのだ。古谷さんは「ひどい」と思うしかなかった。

●嶋裕子さんはアルバイト先の飲食店で客足が減少し、勤務時間を減らされた。そこで収入確保のため「有給休暇を利用する」と会社に申し入れると、「うちには有給休暇なんてない」と断られた。

 アルバイトであれ、半年以上の継続勤務か、所定労働日の8割以上の出勤があれば、会社は有給休暇の取得を断れないという決まりだ。悪質な会社である。なにより嶋さんが不満なのは「正社員の給料はそのまま」であることだ。

●食品工場で働く桐山絵里さんは、コロナ騒動で工場が操業中止になった。正社員には休業手当が支給されている。

「でも、私たちパートにはなんの補償もありません」

政府の賃金補償は「使えない」

 これらのケースから見えてくるのは、コロナが雇用不安を生み出すのではなく、コロナを口実に、最も立場の弱い非正規労働者が蔑(ないがし)ろにされている事実だ。

 だが、困窮者への国の支援策があるではないかと思うかもしれない。政府は、学校閉鎖に伴い子どもの世話で休業する保護者を対象に、雇用形態に関係なく日額8330円を上限に賃金補償すると公表した。しかし、「使えない」と須田さんは断言する。

この賃金補償は対労働者ではなく対会社だからです。会社が政府に申請して、政府が会社に払う。労働者は申請できない。そして8330円で足りない分は会社が補てんするから、そもそも申請をするのかもあやしい制度です」

非正規労働者の相談を受けるジャパンユニオンの須田さん
非正規労働者の相談を受けるジャパンユニオンの須田さん
【写真】悲痛な声が続々…ジャパンユニオンのスタッフが電話応対する様子

 須田さんには強く危惧(きぐ)することがある。すでに派遣社員の「雇い止め」、新卒者の「内定取り消し」が明るみに出ているが、「今後、コロナを口実とした解雇や店舗閉鎖が頻発するのでは」と懸念する。

 実は、ユニオンにはすでに「シンガポール旅行から帰国したら、会社から出社を拒否されました。このままでは退職を余儀なくされます」などの相談が寄せられている。

 そこでユニオンでは、3月20日と21日に「失職」を軸にする労働相談を開催した。結果は、ユニオンのブログを参照してほしい。

 須田さんが問題視するのは、労働者の多くが「コロナは“天災”だから休業もしかたないね」と、自身の境遇をおかしいと疑わないことだ。コロナによる労働環境の悪化は天災ではない。現に、正規労働者の多くは守られている。

 コロナ騒ぎが続く限り、ユニオンでは、電話相談を受けている。心当たりのある人はぜひ相談してほしい。

労働組合「ジャパンユニオン」ブログ https://blog.goo.ne.jp/19681226_001
相談はTEL:03-3604-1294もしくは03-3604-5983

(取材・文/ジャーナリスト・樫田秀樹と週刊女性取材班)