キャリアを捨て、家庭第一で尽くしてきた妻

 今回の夫婦は結婚10年目ですが、夫が海外に赴任する前、日本で一緒に暮らしている間も順調とは言いがたい生活でした。独身時は介護施設で看護師として働いていた明子さん。「俺を支えてくれ」と言う夫のために仕事を辞めて家庭に入り、家族第一で尽くしてきたのです。

 夫の潔癖症やこだわりを家族にも押しつけるスタイルに長年、悩まされてきました。例えば、夕食のおかずは5品以上用意したり、洗濯かごは常に空の状態にしたり、台所のシンクを毎日、ピカピカに磨いたり……明子さんは亭主関白の夫が要求する家事の数々を必死でこなしてきたそうですが、それだけではありませんでした。

 当時6歳の娘さんは小学校から帰るとランドセルを置き、靴下を脱ぎ捨てると自転車に乗り、友達を遊びに行くのですが、明子さんが先に帰宅し、脱ぎっぱなしの靴下、置きっぱなしのランドセル、そして玄関で舞い上がる砂ぼこりを片づけ、掃除しておけば事なきをえます。しかし、たまたま夫が先に帰宅した場合は大変。

「あんな汚い家に住みたくないんだよ! ゴミ屋敷みたいなもんだろ? 俺がいくら片づけても意味ないじゃないか!!」

 夫はありったけの暴言を浴びせるのです。

「子はかすがい」という言葉通り、明子さんは娘さんに免じて夫の亭主関白ぶりを我慢し続けたそう。「あいつ(夫)は電球ひとつ変えてくれたことがないんです!」と愚痴をこぼしますが、どうにか結婚生活を続けてきました。そんな矢先に起こったのがコロナパニックでした。夫の不倫が決定打になり、筆者のもとを訪れた明子さんは「もう終わりだと思いました。時期を見て離婚しようと思っています」と肩を落とします。

(後編に続く)

※後編は6月17日20時30分に公開します。


露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)
1980年12月24日生まれ。國學院大學法学部卒。行政書士、ファイナンシャルプランナー。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化して、行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界で最大規模に成長させる。新聞やウェブメディアで執筆多数。著書に『男の離婚ケイカク クソ嫁からは逃げたもん勝ち なる早で! ! ! ! ! 慰謝料・親権・養育費・財産分与・不倫・調停』(主婦と生活社)など。
公式サイト http://www.tuyuki-office.jp/