不朽の名作が再びスクリーンへ――。劇場公開を延期していた映画『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』が6月12日についに公開。今年の第92回アカデミー賞で衣装デザイン賞を受賞、ほか計5部門にノミネートされた話題作だ。

 いま最も旬な俳優たちがそろった新作版はもちろん、過去に演じた女優たちも“伝説級”の豪華な面々ばかり。時代を超えて愛され続けるのは、一体なぜなのか? コラムニストの矢部万紀子さんは、主人公のジョーに、その秘密が隠されていると話す。

「ジョーはただ夢に向かってやみくもに突っ走る女の子ではなく、常に葛藤しています。他の3人の姉妹や母、ローリーという幼なじみの存在によって、あらゆる価値観にふれているからです。家族や友人の影響を受け思考を深め、ときにはブレーキをかけて思いを巡らせながら自身と向き合っていく姿に、多くの人が共感を持つのだと思います

さまざまな捉え方が
できる作品の楽しさ

 子ども時代に見た当時の記憶と、大人になった今、見て感じることに“違い”があるのも魅力のひとつ。

「小学生のとき、'49年版の映画をリバイバル上映で見て、劇中のドレスやインテリアに憧れを持ちました。気取り屋のエイミーにエリザベス・テイラー、繊細で病弱なべスをマーガレット・オブライエンが演じていて、憧れが詰まった美しいホームドラマとして好きな作品だったんです。

 しかし'94年版を見た当時はすでに働いていたので、ジョーの生き方や当時のアメリカにおける女性の位置づけといった視点で見ることができました。子どものころの見方と大人になってからの見方が違うのは『若草物語』という作品がさまざまな捉え方ができるように作られているからだと思います」(矢部さん)

そもそも若草物語とは……

 ルイーザ・メイ・オルコットが、1868年に書き上げた自叙伝的小説。19世紀の名作として知られ、過去に幾度となく映像化されている。19世紀後半のアメリカを舞台に、マーチ家の個性豊かな4姉妹の人生や結婚、その後の生活を描いた物語。

ジョー(シアーシャ・ローナン)
 マーチ家の次女で、本作の主人公。作家になる夢を持ち、信念に沿って突き進む情熱家。自分の意見を曲げられないため、周囲と衝突することも。性別で決められてしまう人生を変えようと、幼なじみのローリーのプロポーズも断って夢を追いかけるが――。

メグ(エマ・ワトソン)
 マーチ家の長女。美しくしっかりものだが、ジョーとは反対に控えめな性格。心から愛する人と結婚し、妻として、母親として生きることが幸せと信じている。

べス(エリザ・スカンレン)
 マーチ家の三女で、繊細で内向的なピアニスト。病弱だが、自分の身体をかえりみず人を助ける強さを秘めている。ジョーからは寵愛を受け、エイミーからも懐かれている。

エイミー(フローレンス・ピュー)
 マーチ家の末っ子。芸術の才能があり、オシャレや流行に敏感だが、頑固で気取り屋のためジョーとケンカが絶えない。お金が人生の幸せと信じて、上流階級の男性と結婚するために自分磨きを欠かさない。