ドラマをきっかけに嵐にハマる人が続出

 そして、眠れる獅子が目を覚ましたが如く、'06年から嵐の大躍進が始まる。第4位の『One Love』は、'08年公開『花より男子F(ファイナル)』の主題歌だ。

「こんなにも直球の一途なラブソングはほかにはないと思う」(46歳・接客業)

「友達の結婚式で歌った曲。ウエディングの定番ソングで愛にあふれた歌だと思う」(40歳・主婦)

「好きなドラマの曲で、歌詞とドラマの世界観が合っていて好きだった」(35歳・主婦)

 といった声が挙がるように、ドラマをきっかけに嵐にハマる人も続出。先に登場した『Happiness』も、二宮と櫻井が主演の『山田太郎ものがたり』の主題歌だったように、さまざまな入り口から新規アラシック(嵐のファン)が増加していったことがうかがえる。ちなみに、『Happiness』のカップリング曲である『Still…』も人気が高く、「過去3回行われたアラフェスのカップリング部門において、ずっと1位だったから! 『ひみつの嵐ちゃん』最終回のエンディングで流れていたのも印象深いです」(41歳・販売業)といった声も。

「'07年に公開した嵐主演の映画で、犬童一心監督の『黄色い涙』も大きかったと思います。公開時、アイドルには珍しくカルチャー誌が特集を組むなど大きな注目を浴びました。かつて深夜枠で、嵐を見守っていたサブカル層が再び嵐に注目するなど、メンバーのバラエティーの豊かさがより顕著になった。そして、6位に選ばれている『truth』が彼らの人気を不動のものにする役割を担ったと思います」(田幸さん)

『truth』は、'08年、大野主演のドラマ『魔王』の主題歌。ネット検索サイトのドラマ満足度投票において1位を獲得するなど高い評価を受け、「主婦層が大野さんをきっかけに嵐の魅力に気がついた作品」と田幸さんは分析する。実際、投票者の声を見ると、

「この歌を歌う大野くんがすごくカッコよかったから」(56歳・主婦)

「彼の演技力に驚いた。MVもオーケストラを使用して、ダンスとともにとてもカッコいいものだった」(38歳・会社員)

嵐には大野の憂いのある歌声は不可欠

 そして田幸さんは、大野の“声”についてこう語る。

「『PIKA☆NCHI』にも言えるのですが、特に切ない曲は大野さんの憂いのある歌声がないと成立しないくらい。嵐の音に、彼の歌声は不可欠。声を張り上げずに、柔らかく歌い、哀愁を帯びた歌唱力を持つジャニーズの歌い手は、堂本剛さんと大野さんがツートップだと思います」『Monster』も大野が映画とドラマで主演を務めた『怪物くん』の主題歌だ。ブレイク前夜からタイアップが多かった嵐だが、人気曲アンケートを集計すると、同じタイアップ曲でも前夜とブレイク後では雲泥の差があることがわかる。

「私個人は、櫻井さんが出演した'02年『木更津キャッツアイ』の主題歌『a Day in Our Life』に衝撃を受けました。このときは、楽曲にしても番組にしても、作品のクオリティーが高くても、初期の嵐は人気に直結しませんでした。この当時の曲があまりランクインしていないということは、それだけ一般層に認知されてからの嵐の楽曲が強いということでしょうね」(田幸さん)

 そう考えると、『言葉より大切なもの』『サクラ咲ケ』といったブレイク前夜の曲は、初期から嵐を見ているファンにとっては、思い入れが強い曲だとわかる。

「『サクラ咲ケ』は中学受験をしたときに、何度も心の支えになってくれた1曲」(28歳・販売業)

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 一方で気になるのは、アンケートを見ると’15年以降の楽曲が下位に低迷している点だ。デビュー曲『A・RA・SHI』の最高累計売り上げ枚数を更新し、米津玄師が作詞・作曲・編曲を手がけた最新曲『カイト』こそ健闘しているものの、'07年前後の楽曲群の人気度に比べると寂しい印象はぬぐえない。

「ここまで大きな存在になると、どうしても万人受けする曲になってしまう。嵐のすごいところは、何かのファンになったことがない人を数多くファンにさせてしまった点。老若男女を満足させるには初期のようなインパクトのある楽曲は難しい」(田幸さん)