「時代遅れ」「ひとりよがり」……。自分の考えを曲げることなく、若者から疎まれる人たち。芸能評論家の宝泉薫がセレクトしたタレントたちの独善っぷりをとくとご覧あれ!

自覚があるのもかえって哀しい

〜時代遅れを認める黒沢年雄、ネットの悪口が気になる小倉智昭

 “老害”という言葉がある。最近では、自民党の二階俊博幹事長と麻生太郎財務大臣が「政界二大老害」だとして批判された。芸能界では、黒沢年雄。まずは昨年11月「テレビの朝のニュースワイドショー。」と題したブログ記事にこんな感想を書き、炎上してしまった。

《異常にお太りになった、決して美しいとは言えず…見にくい物体を見せられるのは、愉快とは言えず…不愉快だ…》

 これは『グッとラック!』(TBS系)に出演している女性お笑いトリオ・3時のヒロインを指すようだ。というのも、その1週間後には、同番組でMCの立川志らくのカツラ疑惑を、彼女たちがいじる場面が。志らくは、すかさず「そんなこと言ってるから黒沢年雄さんに怒られる」と切り返して、笑いに変えてみせた。

 そんなやりとりを知ってか知らずか、最近、黒沢は《人権保護法…言論の自由はどこまで…??》というブログ記事で《窮屈な世の中にどんどんなって行く…》として「おデブちゃんは差別用語でハゲはいい」のかと問いかけている。代表作でもあるドラマ『ザ・ハングマン』(テレビ朝日系)では凶悪犯と戦ったが、今はコンプライアンスという新たな敵(?)に苦戦中だ。

 また《謹賀新年…時代遅れの僕。》というブログ記事では、昨年の『NHK紅白歌合戦』について《理解に苦しむ最悪の歌番組だった》としつつも《殆んど知らない曲が大ヒット…(すいません…僕の勉強不足)》と自嘲していた。かつて歌手としても『やすらぎ』や『時には娼婦のように』を大ヒットさせた人がすっかり時代に置いていかれているのは哀しく、老害と呼ぶには気の毒にも感じたものだ。

 そんな気の毒な人がもうひとり。先日、22年間も司会を務めてきた『とくダネ!』(フジテレビ系)の3月終了が決まった小倉智昭だ。公式発表翌日の放送では「病気してからネット情報とか見るようになっちゃった」と告白。「老害じゃないか、とか、ぼけてるんじゃないかとキツイ」書き込みを見たことがショックだったと弱音を吐いた。師匠にあたる大橋巨泉が長年、老害扱いされながらも強気な態度を崩さなかったのとは対照的である。

 これはおそらく、時代に遅れてはいけないというワイドショー司会者としてのプライドが傷ついたからだろう。しかし、加齢とともに自分の感覚と時代の感覚がズレていくのはしかたない。また、そのズレを埋めようと無理をしてしまうのもしかたないことだが、老害と呼ばれるような問題はだいたいそういうところから生まれる。

 そんなケースの数々を、見ていくとしよう。