嵐メンバー随一の好感度を武器に

 業界内で「嵐のメンバーでMCの技術が高い」と言われているのは、櫻井翔と二宮和也の2人。櫻井は落ち着きのある進行、二宮はアドリブを含むトーク力が評価されている。

 一方、相葉がMCとして評価されているのは、技術ではなくキャラクター。長年CM出演数ランキングで上位をキープするなど、好感度の高さはメンバーの中でもトップであり、コロナ禍の今、癒しを感じさせられる相葉の存在価値はますます上がっている。つまり、相葉がMCを務めるだけで、その番組に癒され、笑顔になれる人が多いということだ。

 たとえば、『VS嵐』は嵐の強みである仲のよさや楽しげな姿で視聴者を引きつけてきたが、『VS魂』のメンバーは各グループからの寄せ集めだけに同じようにはいかない。しかし、相葉がMCとして真ん中に立つことで、仲がよさそうで楽しげなムードが早くも芽生えつつある。

 そんな技術よりムード作りを重視した相葉のMCスタイルは、『天才!志村どうぶつ園』で志村けんさんから学んだものだろう。何かと暗い話題が多く、ストレスフルな現在は、明るいムード作りが重視されている。また、King & Prince、Snow Man、SixTONES、なにわ男子、Travis Japan、HiHi Jets、美 少年など、ジャニーズの若手が一気に台頭してきたことで彼らを生かす兄貴分のMCが必要であり、その意味でも穏やかな相葉は最適な人材だ。

 ただ、「嵐が活動休止に入った今こそ、MCとして一本立ちするチャンス」「先輩の中居正広とは違う形のMCとしてバラエティーをけん引してほしい」という期待値の高さが、いきなり難易度の高い仕事につながっている。たとえば、『VS魂』は親友の風間俊介がいることで精神的な負担は軽減されているが、それでも結果は別物であり、難しさは変わらない。

 嵐の活動がない今、スケジュール的な問題がないだけに、3番組が無事に成功を収めたとき、相葉のもとに新番組のMCオファーが来るだろう。逆に、視聴率という目に見えた結果が得られなかったとき、キャラクターに頼るMCスタイルの是非が問われるリスクがある。業界内には「メンバーやファンを思って涙を流すこともあった優しい人柄が自分を追い詰めてしまわないか」と心配する声もあり、長い目で見ていきたいところだ。

木村隆志(コラムニスト、テレビ解説者)
ウェブを中心に月30本前後のコラムを提供し、年間約1億PVを記録するほか、『週刊フジテレビ批評』などの番組にも出演。各番組に情報提供を行うほか、取材歴2000人超の著名人専門インタビュアーでもある。著書にトップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術など。