複雑な家庭に生まれ、かつて日本一の不良を志した少女はいま、「女性たちを家事の負担から解放したい」と語る。洗濯代行サービスで狙うは変わらず日本一! ダブルマザーで子育て、社長業と自分らしい道を諦めなかった彼女が見据える未来とは――。

 東京・中目黒駅から続く、高架下の商店街。しゃれたカフェや雑貨屋、居酒屋などが並ぶ一角に、異彩を放つ店がある。店名は『WASH&FOLD』。

 ガラス張りの店内には、壁一面にシルバーメタリックの洗濯機や乾燥機がずらりと並び、コインランドリーのよう。

 しかし、なぜだか店の中央では、男性スタッフが洗濯物をたたんでいる。

何やってんだ? って不思議ですよね(笑)。うちは、コインランドリーだけでなく、メインで洗濯代行サービスをやってるんです

 ざっくばらんに話すのは、WASH&FOLDを運営する、アピッシュ・代表取締役の山崎美香さん(52)。

 ショートヘアにスタッフジャンパーをまとい、ボーイッシュな印象だ。

洗濯代行って、まだ日本では一般的なサービスじゃないですからね。こんなふうに洗濯物を目立つ場所でたたんでコインランドリーのお客さんや、道を歩く人に、興味を持ってもらうようにしてます

 山崎さんが手がける洗濯代行とは、専用のランドリーバッグに、洗濯物を詰め放題で出してもらい、洗濯機で洗い、乾燥させ、きれいにたたんで返すサービス。家の洗濯を丸ごと引き受けてくれるわけだ。細かい点も行き届いている。

洗濯はひとバッグずつ洗うので、ほかの人の洗濯物と混ざることはありません。下着を出す場合はランジェリーネットを無料で貸し出すので、それに入れてもらえば人目につくことなく洗濯できます

 ちなみに料金は、Tシャツなら60枚が入る、レギュラーバッグ(大)で持ち込みの場合、2420円。玄関先で受け渡しができる集荷の場合、3520円(ともに税込み)。

 ここ中目黒高架下店だけでも、1日70~80バッグを洗濯しているという。

 サービスも斬新だが、店の雰囲気もカッコいい。

ひと昔前のコインランドリーって、やぶれた雑誌が置いてあって、切れかけた蛍光灯がチカチカしてる、殺風景な場所でした。だから、利用するときも『雨が続いたから乾燥機だけ使いにきた』って言い訳したくなっちゃう。そういうイメージを変えようと

 白を基調にした店内には、観葉植物のグリーンがふんだんに使われ、しゃれたカフェのよう。Wi-Fiも無料で使えるので、洗濯物を待つ客たちは、ソファでノートパソコンを開いたりと、思い思いに過ごしている。

洗濯代行サービスって、海外では気軽に利用されてるけど、日本にはその文化がなかったんです。日本の女性は頑張り屋さんで、洗濯を人まかせにするのが後ろめたいというか。堂々と利用してもらうためにも、人に自慢したくなる店、人に教えたくなるサービスにしたかったんです

 このサービスを日本に初めて持ち込んだのが、ほかでもない山崎さんだ。

 2005年に1号店を代々木に出店して以来16年。着々と店舗を増やし、現在は直営店とフランチャイズ店を合わせて27店舗を展開している。

 日本初のビジネスを軌道にのせた山崎さんは、さながらすご腕のキャリアウーマンといったところか。

 そう水を向けると、「いや、いや」と照れながら明かす。

私、昔はヤンキーで日本一の不良になるのが目標だったの(笑)。軽トラで焼きいも売ってたこともあるんです