《聖火ランナーのご依頼をいただきましたが、前述のとおり既に舞台の出演が決まっていたため、お断りさせていただきました》

 3月1日、所属事務所のHP上であらためて、東京五輪の聖火リレーランナーの辞退を報告した常盤貴子。6月に石川県内を走る予定だったが、当初より5月から6月にかけて舞台出演が決まっていたことを理由とした。

 3月25日に福島県からスタートする『東京2020オリンピック』聖火リレーまで1か月を切った今、何とも雲行きが怪しくなってきた。

 ここにきて福井県内を走る予定だった五木ひろし、石川県の常盤、福島県の斎藤工、沖縄県の玉城ティナと芸能人ランナーの辞退が相次いでいる。これにより関係各所が代役を立てるなどの対応に追われているようだ。

「やはり森喜朗元会長の“女性蔑視”発言から風向きが変わってきましたね(苦笑)。まずは愛知県のランナーに選ばれていたロンブー・田村淳が、森元会長の発言に“人の気持ちを削ぐ”と難色を示して辞退を表明。

 さらに自民党の二階俊博幹事長が、ランナー同様に大会ボランティアの辞退が続いていることに対し、“新たに募集するまで”と空気を読めない発言をしたことも拍車をかけたように思えます。これでは聖火ランナーも“代わりはいくらでもいる”と言われた気分にもなりますよ」(スポーツ紙記者)

 新型コロナウイルスの感染拡大によって医療危機が高まり、日本以上に死者、重症者が出ている世界各国では“それ”どころではない情勢だ。それでも、菅義偉首相をはじめとする与党幹部の面々は頑なに「絶対に開催!」の強行姿勢を崩そうとはしない。

“カドが立つ”のを気にする

 共同通信が行った世論調査によると「中止すべき」「再延期するべき」といった、開催に反対する意見が8割を占めている。そんな民主主義的に「NO」が突きつけられているだけに、ランナーを「辞退しない」イコール「開催賛成派」と世間に受け止められる恐れもある。

 芸能ジャーナリストの佐々木博之氏は「淳さんのように理由を明確に言えるのは例外」として、

「以前より、コメンテーターとして政治的発言をしてきた彼ならまだしも、日本ではいまだ芸能人が政治的発言をしたり、物申すことは良しとはされない風潮があるのも事実。なので、政府に対して“カドが立つ”のを気にして、別の理由をつけて断る必要があったと考えられますね」

 その“理由”として、冒頭の常盤をはじめ、五木や斎藤、玉城が揃って発表したのが「スケジュールの都合」だった。

「聖火リレーの話でなくとも、例えば仕事のオファーやプライベートのお誘いがあったときに、別の用件が入っていたり、あまり気乗りしない場合には“すみません、スケジュールの都合で……”と言えば、相手側も“しょうがない”と波風を立てず、機嫌を損なうことなく体良くお断りできる、非常に使い勝手の良い言葉ではありますね」(佐々木氏)

 もちろん、五輪の開催が1年延期された背景が大前提としてあり、常盤や五木は昨年の時点で断りを入れていたことから、もとより2021年に組まれていたスケジュールが存在していたのだろう。それを優先するのはプロとして当然のことだ。また公開延期になった映画など、昨年に行われる予定だった撮影がずれ込んでしまった可能性もある。これもスケジュールの都合だ。